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『最高の花婿 アンコール』

 
       

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作品データ
原題 Qu'est-ce qu'on a encore fait au bon Dieu? 
制作年・国 2018年 フランス
上映時間 1時間38分
監督 監督・脚本:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン  共同脚本:ギィ・ローラン
出演 クリスチャン・クラヴィエ、シャルタン・ロビー、フレデリック・ベル、メディ・サドゥアン、ジュリア・ピアトン、アリ・アビタン、エミリー・カーン、フレデリック・チョウ、エロディー・フォンタン、ヌーム・ディアワラ
公開日、上映劇場 2020年5月29日(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、6月19日(金)~京都シネマ 他全国順次公開

 

問題だらけのお国だけれど、誰しもが幸せに生きられる秘訣を、

美しく豊かな国のパパとママが教えてくれる、傑作コメディ!

 

フランスは古城巡りで有名なロワール地方に住むクロード(クリスチャン・クラヴィエ)とマリー(シャルタン・ロビー)には、美しい4人の娘がいる。だが、その花婿たちはクロード曰く、“多国籍軍”!?。弁護士をしている長女のイザベル(フレデリック・ベル)はチュニジア出身の弁護士・ラシッド(メディ・サドゥアン)と、歯科医をしている次女のオディル(ジュリア・ピアトン)はイスラエル出身の起業家のダヴィド(アリ・アビタン)と、奇妙な絵ばかり描く三女のセゴレーヌ(エミリー・カーン)は中国出身の銀行家・シャオ(フレデリック・チョウ)と、そして商社勤務の四女のロール(エロディー・フォンタン)はコートジボワール出身の俳優・シャルル(ヌーム・ディアワラ)と結婚しているのだ


hanamuko encore 500-2.JPGそう、2016年に公開された『最高の花婿』の続編なのだ。前作は、四女・ロールの結婚を巡る「今度こそフランス人の花婿を!」と願っていたヴェルヌイユ家のてんやわんやが描かれ、美しいロワール地方を舞台にした傑作コメディは世界的大ヒットとなった。あれから4年。アンコールの呼び声高く、続編がついに完成! フランスでは、異なる民族・人種・宗教間の結婚が全体の20%を占めているそうだが、ヴェルヌイユ家の4姉妹はなんと、ムスリムのチュニジア人、ユダヤのイスラエル人、仏教の中国人、そしてキリスト教のコートジボワール人と、見事な国際派ぞろい。父親が“多国籍軍”と呼んで頭を抱えるのも無理もない。


今回は、その4人の花婿たちのパリでの生き辛さから外国移住計画を思いつく過程と、「愛しい娘や孫たちと会えなくなる!」と慌てたクロードとマリーの涙ぐましい移住阻止計画が中心となる物語である。そして、前回のお騒がせシャルルの両親も娘の結婚式のためにコートジボワールからやって来て、またしてもクロードとの“頑固おやじ対決”を展開して楽しませてくれる。


hanamuko encore 500-1.JPG初めに、クロードとマリーは4人の花婿のそれぞれの国を訪れる旅に出る。ところが、疲れ果ててシャルル・ド・ゴール空港に着くなり今やフランス名物となった「ストライキ」に遭遇するも、「やっぱフランスが一番!ロワール最高!」と歓び叫ぶ始末。さらに、各国の旅の話を訊かれ、マリーが一所懸命いいところを話そうとするが、それを打ち消すような事ばかりを言うクロード。観ているこちらは各国の事情を知っているだけに「さもありなん」と笑えてくる事柄でも、自国をけなされた婿たちにとってはたまんない!またもや娘や婿たちを怒らせてしまう。


ムスリム女性のヒジャブを巡る弁護を一度引き受けたら同じような案件ばかりが舞い込んでうんざりしている弁護士のラシッド。ユダヤ人のくせに商売が下手で何をやっても上手くいかないダヴィド。最近中国人が襲われる事件が多発し子供たちの将来に不安を抱えるシャオ。黒人には決まって犯罪者役や通行人などの端役しか回ってこなくて中々俳優として芽が出ないシャルル。パリで暮らす彼らにとって、いつまでも外国人扱いされる生き辛さを感じていたのである。


hanamuko encore 500-3.JPGそこで思い立ったのが各出身国への移住計画。シャルルだけは「あの頑固おやじから少なくとも5000㎞は離れたい」ということで、有色人種のスターばかりのボリウッド(インド)を目指すことに。不思議と妻たちもそれぞれの仕事の都合上大賛成となる。さあ、困ったのはクロードとマリー。「孫たちが生き甲斐!」というマリーから厳命を受けて、クロードのミッションは始動するのだが……?


優しくてリベラル派のおっとりマリーに対し、超保守派のクロードから繰り出される植民地時代、フランスが宗主国だった国々(チュニジアやコートジボワール、ベトナムなど)へ対する上から目線の言葉が、悪意のない嫌味が効いていて実に可笑しい。先祖から受け継いだ家屋敷に愛する家族のいる郷土愛にあふれた善意の愛国者なのだ、クロードは。花婿たちとの“仁義なき闘い”から、“協調・共生”へと舵を切ったクロードとマリーの博愛主義こそ、移民の多い国・フランスで幸せに暮らせる秘訣なのかもしれない。多くの問題を扱いながらも、人間味あふれるセリフの応酬で抱腹絶倒を誘うショーヴロン監督のマジックに、心癒されハッピーな気分になってほしい!

 

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.cetera.co.jp/hanacore/

配給:セテラ・インターナショナル

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