原題 | MIDSOMMAR |
---|---|
制作年・国 | 2019 年 アメリカ |
上映時間 | 2時間27分 R15+ |
監督 | 監督・脚本:アリ・アスター (長編デビュー作『ヘレディタリー/継承』) |
出演 | フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィルヘルム・ブロングレン、アーチー・マデクウィ、エローラ・トルキア |
公開日、上映劇場 | 2020年2月21日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)ほか全国ロードショー |
太陽と花と緑の美しい北欧の夏を舞台にした
戦慄のカルトスリラー
スウェーデンの奥地、90年に一度の「夏至祭」に招かれたアメリカの学生たちを待ち受けていたのは、幽霊でもお化けでもない、カルト教団による“戦慄の掟”だった。教団内の血筋を絶やさぬための秘儀、それは花咲き誇る美しい季節となる白夜に行われる。教団の人々は一応に金髪の美しい白人ばかり。陽光ふりそそぐ緑豊かな平穏な場所、何事も起こりそうにない歓迎ムードの中、ひたひたと迫り来る恐怖。何かが違う、逃げたいけど逃げられない。この張り詰めた空気は一体なに?
新たな恐怖体験の始まりである――冒頭、ダニー(フローレンス・ピュー)の不安と恐怖に満ちたアップの表情から始まる。精神を病む妹から自殺をほのめかすメールが届いたのだ。恋人のクリスチャン(ジャック・レイナ―)に電話しても心ここにあらずの返事。彼は繊細なダニーのことを疎ましく感じ始めていた。ダニーの心配は的中し、妹が両親を道連れに心中してしまったのだ。一度に家族を亡くしたダニー。周囲は腫れ物に触れるような気の遣いようだ。
夏休み、スウェーデンからの交換留学生ペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)が、90年に一度開催される故郷の「夏至祭」に仲間を誘う。マーク(ウィル・ポールター)とジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)は大張り切りで、クリスチャンとダニーも同行することに。初めての北欧の夏、花と緑の美しい白夜に興奮する4人。ペレの故郷の人々は優しい笑顔で大歓迎してくれるが、それはペレの家族ではなく共同体のような集団だった。そう、そこはカルト教団だったのだ。
広い野原にはいくつかの木組みの家が点在し、何やら儀式的なモニュメントもある。イギリスからやってきたカップルと共に4人は教団の人々と集団での生活が始まる。大きな悲しみを抱えたままのダニーだったが、この天国のような美しい場所で少しでも心の平穏を取り戻そうとしていた。ところが、二日目、思いもよらぬ光景を目にしてしまう。ゲストは皆パニックに陥ってしまうが、教団の長老などに説得されたり、興味深い様々な儀式に参加したり、恐怖を感じながらも抗えない教団の渦の中に引きずり込まれていく……。
ラストのダニーの表情に注目して見て頂きたい。乙女たちが倒れるまで踊り明かしたり、生贄の儀式へと展開する終盤、正気なのか狂気なのか、恐怖の果ての心の安寧とは存在するのか。闇のない陽光の下で繰り広げられる不思議な儀式が意味するものとは?
主役のダニーを演じたフローレンス・ピューは、今年のアカデミー賞助演女優賞に『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』でノミネートされているが、去年公開された実在のプロレス一家の物語『ファイティング・ファミリー』でも全身で喜怒哀楽を表現して印象深かった。本作でも不安・絶望・恐怖・歓びと豊かな感情表現で、観る者を恐怖の世界に引き込む。
余談だが、ルキノ・ヴィスコンティ監督作『ベニスに死す』(1971年)のあの美少年、ビョルン・アンドレセン(現在65歳)がスウェーデンへ行ってからの前段で登場する。お見逃しのないように。
(河田 真喜子)
公式 HP: https://www.phantom-film.com/midsommar/
公式 twitter: @midsommarjp
提供:ファントム・フィルム/TCエンタテインメント
配給:ファントム・フィルム
© 2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.