原題 | 地球最后的夜晩 Long Day's Journey Into Night |
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制作年・国 | 2018年 中国・フランス合作 |
上映時間 | 2時間18分 |
監督 | 監督・脚本:ビー・ガン |
出演 | タン・ウェイ、ホアン・ジェ、シルヴィア・チャン、チェン・ヨンゾン、イー・ホンチー、ルオ・フェイヤン |
公開日、上映劇場 | 2020年2月28日(金)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、京都みなみ会館、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
〜見たことのない映像体験にいざなう旅(ジャーニー)〜
中国第8世代を代表するビー・ガン監督の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』は、映画の後半60分が3Dになり、しかもワンシークェンスショットの映像という驚異的な作品なのだが、その技法をはじめ、官能的な映像の魅力と豊かな表現は、この映画が中国映画(フランスとの合作だが)であることを忘れてしまう。もし、中国映画にある種のイメージを持っている人がいたら、一旦それを忘れてほしい。
ビー・ガン監督が26歳で撮った長編デビュー作『凱里(かいり)ブルース』より先に、第2作である『ロングデイズ・ジャーニー』が日本公開されることになったが、『ロングデイズ〜』が世界のみならず、中国本土でも大ヒットした実力を堪能するのはこちらの方がふさわしいという配給側の判断であろうか。
その力量のほどは、惜しくもデビュー作が遺作になった『象は静かに座っている』のフー・ボー監督と並んで紹介されることでも明らかであるが、フー・ボー監督が師と仰ぐタル・ベーラ監督の影響を受けているように、ビー・ガン監督も、先達の名監督たちの作品を想起するシーンがそこここに見られる。にもかかわらず、決して模倣だと思わせないオリジナリティを感じさせるのが素晴らしい。もう見てもらうしかないのであるが、少しだけ、物語にも触れておこう。
ルオ・ホンウ(ホアン・ジエ)は、父の死をきっかけに長い間離れていた故郷・凱里に帰ってくる。かつて、幼なじみであった〈白猫〉との約束を果たせず、〈白猫〉を死なせたことや、自分を捨てて他の男と駆け落ちした母親の記憶など、故郷には複雑な思いがあった。父は自動車をホンウに、食堂を後妻に遺した。ホンウは亡くなった母のつけたレストラン名を残してほしいと義母にいう。
ホンウが探していた女、その女性は香港の女優と同じワン・チーウェン(タン・ウェイ)と名乗った。彼女とホンウは付き合いはじめ、映画館でデイトする。目が醒めると彼女は消え、ホンウは不思議な空間に導かれる。そこで出会ったチンピラと卓球をし、ゲーセンでチーウェンそっくりな女に出会い、また〈白猫〉の母親(シルヴィア・チェン)とそっくりな女にも出会う。
これは夢か幻が判然としない世界に観客も誘(いざな)われる。回転する部屋、ラケットが回転すると空を飛べるというチンピラ。回転はこの映画のキーワードでもある。回ることで別世界に飛翔する。また洞窟内の線路をトロッコで移動したり、ロープウェイで山頂から地上に降りたりする、左右や上下の移動も回転と同じく人を異次元に連れて行く仕掛けだ。
観客はホンウとともに時間と空間の旅をする。それを心地よいと思うかどうか、心地よくはなくても体験したことがいつまでも後を引く、その映像が忘れられない1作になることは間違いない。
余談だがホンウの携帯電話の着信音が中島みゆきの「アザミ嬢のララバイ」である。
(夏目 こしゅか)
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配給:リアリーライクフィルムズ、miramiru