映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『テルアビブ・オン・ファイア』

 
       

telaviv-550.jpg

       
作品データ
原題 TEL AVIV on FIRE
制作年・国 018年 ルクセンブルク・フランス・イスラエル・ベルギー
上映時間 1時間37分
監督 サメフ・ゾアビ
出演 カイス・ナシェフ、ヤニブ・ビトン、ルブナ・アザバル、ナディム・サワラ、マイサ・アブドゥ・エルハディ、ユーセフ・スウェイド他
公開日、上映劇場 2020年1月31日(金)~シネ・リーブル梅田、2月1日(土)~京都シネマ、4月~神戸アートビレッジセンターほか全国順次ロードショー

 

~イスラエルvs パレスチナの問題をからめた抱腹絶倒コメディ~

 

中東情勢というのは、イマイチどうもわかりづらいという日本人はけっこう多い。ニュースなどで流れるのは、領土をめぐっての長い歴史と、宗教や民族の違いに関わる紛争が多いものだから、その地ではいつもいがみ合いが繰り返されているような印象を受ける。でも、この映画を観ていて、「なんだろう、このゆる~い空気は?」と思った。イスラエル人もパレスチナ人も、それぞれの風習やアイデンティティを大切にしつつ、ええ塩梅に住み分けしているのではないか、という希望的観測すら生まれてきた。


telaviv-500-2.jpgエルサレムに住むパレスチナ人の青年サラーム(カイス・ナシェフ)は、叔父がプロデューサーをしているテレビの人気ドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の制作現場で、ヘブライ語の言語指導と雑務をこなしている。ある日、仕事場からエルサレムに戻ろうとしたサラームは、検問所で女性兵士に不用意なひとことを言ったため、不審人物とみなされ、イスラエル軍司令官アッシ(ヤニブ・ビトン)のもとへ連れていかれる。サラームが「自分は『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本の仕事をしている」と、相手に思わせる発言をしたことから、思わぬ事態を招くことに…。


telaviv-500-5.jpgテレビドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の撮影風景から始まり、思わず笑ってしまう驚愕の結末まで、ブラックなユーモアも含めて笑わせるエッセンスがたっぷり!脚本に口を出し始め、だんだんエスカレートしていくアッシの熱っぽさと、どことなく自信不足で、アイデアを欲しがるサラームの他力本願ぶりの対比がおかしい。サラームとアッシのやりとりは、複雑な現地の事情を反映させながらも、なんばグランド花月の舞台に立たせてもいいほどに可笑しく、イスラエルの将軍とパレスチナ人女性の、恋と陰謀を描くテレビドラマの内容が絶妙に絡んでくるのも面白い。


telaviv-500-3.jpgフムスという食べ物が効果的に使われている。これは、すりつぶしたひよこ豆に、練りごまやにんにく、オリーブオイル、レモンなどを加えたペースト状の料理で、ピタパンや野菜につけて食するもの。サラームはこれが嫌いなのだが、アッシは何よりの大好物というのも、何となく深読みしたくなるところがある。


サメフ・ゾアビ監督は、パレスチナ人の村で育ち、さまざまに苛酷な現実を見てきたと思うが、コメディを作品づくりの大切な要素としてとらえていて、今後も期待したい監督のひとり。昨年の東京国際映画祭のために、アッシを演じたヤニブ・ビトンとともに来日した。


(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://www.at-e.co.jp/film/telavivonfire/

(C)Samsa Film - TS Productions - Lama Films - Films From There - Artemis Productions C623

月別 アーカイブ