原題 | JOJO RABBIT |
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制作年・国 | 2019年 アメリカ |
上映時間 | 1時間49分 |
監督 | タイカ・ワイティティ |
出演 | ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、タイカ・ワイティティ、レベル・ウィルソン、スティーブン・マーチャント、アルフィー・アレン、サム・ロックウェル、スカーレット・ヨハンソン他 |
公開日、上映劇場 | 2020年1月17日(金)~TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸ほか全国順次ロードショー |
~風刺性とファンタジー色で惹きつける、異色の反ナチ映画~
第2次世界大戦下のドイツ、主人公のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、母親のロージー(スカーレット・ヨハンソン)と暮らす10歳の少年。ナチスに憧れ、心の友ともいえる空想上のアドルフ(タイカ・ワイティティ)と会話を交わす毎日だ。彼は青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加することになったが、「ウサギを殺せ」という命令に応えることができず、臆病者とみなされ、“ジョジョ・ラビット”というあだ名をつけられた上、大怪我をするはめに。家に戻ってきたジョジョは、亡くなった姉の部屋に隠し扉を発見。そして、その奥に彼が見つけたのは、驚くことに、ユダヤ人少女のエルサ(トーマシン・マッケンジー)だった…。
観ているうちに連想したのは、ウェス・アンダーソン監督の作風だ。子供の目を通して描かれる大人の世界と、子供のイマジネーションとのギャップ、そして映像の鮮やかな色合い。ナチスを扱った映画というと、重苦しい灰色だとか、軍服や廃墟を思わせるカーキ色のイメージが強いのだが、本作では随所にはっとさせられるような美しい色彩がアクセント的に使われている。まるで、未来に開かれる可能性をいっぱい持った少年の心を表すかのように。さらに、ウェス・アンダーソンよりも強くてわかりやすいメッセージ性と結びつき、観る者との共感を育んでゆく。
登場人物たちは類型的でなく、それぞれに個性を光らせている。ちょっぴりヘンなところがあるけれど、愛情とやさしさを持って行動する母のロージー、気が強く、自己主張の壁を壊さず、きっぱりとした前向きの瞳の持ち主エルサ、ナチスに属しながらも、アウトロー的で冷めた感情を抱えているクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)。こういう人たちと関わることで、ナチス予備軍的だったともいえるジョジョ少年が少しずつ変わっていくのだ。
ビートルズやデヴィッド・ボウイ、トム・ウェイツなどの歌を取り上げた意外な選曲も印象的!私たちの知らないあの時代のあの国で行われていた暴挙を思い、そこから生き延びつつも、けして忘れられないトラウマを抱え続けている人たちを思う。それでも、「生きていて良かった」という感慨が一人でも多くの人に、という願いをしみじみと心のなかで繰り返したくなるような、そんな作品である。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/
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