原題 | La promessa dell'alba |
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制作年・国 | 2017年 フランス=ベルギー |
上映時間 | 131分 R-15+ |
原作 | ロマン・ガリ「夜明けの約束」(共和国) |
監督 | エリック・バルビエ |
出演 | シャルロット・ゲンズブール、ピエール・ニネ、ディディエ・ブルドン、ジャン=ピエール・ダルッサン、キャサリン・マコーマック、フィネガン・オールドフィールド他 |
公開日、上映劇場 | 2020年1月31日(金)〜大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー |
~フランス版「おしん」!?
息子に夢を懸ける母の絶対的な愛〜
息子への愛があまりにも強すぎると、子離れできていないとか、息子がマザコンになってしまうと考えてしまいがちだが、そんなレベルをはるかに超える強烈な愛の絆で結ばれた母と息子の物語が誕生した。フランスを代表する作家であり、フランスの外交官、映画監督そして、『勝手にしやがれ』主演女優ジーン・セバーグの元夫としても知られるロマン・ガリの自伝小説を映画化。ロマンの子ども時代から始まり、ヨーロッパから戦争でアフリカ、イギリス、ついにはメキシコまで、壮大なスケールで描き、1930年代前後から四半世紀に及ぶヨーロッパの情勢もたっぷり盛り込まれている。そして何よりも、息子が理想の仕事、理想の人生を歩み、世の役に立つ人間として大成するため、死に物狂いで稼ぎ、ロマンを導く母、ニーナのパワフルな生き方に圧倒されるのだ。
ユダヤ系ポーランド人移民のニーナは、モスクワからポーランドに流れ着き、一人息子のロマンを将来作家や大使になるように、自ら体を粉にして働きながら、教育を受けさせる。それでも移民に対する偏見は厳しかった。結局破産した二人は、フランスのニースへ転居、ニーナは高級ホテル内の店舗経営をしながら、ロマンをパリの大学へと送り出す。パリで作家活動を始めたロマンの短編が新聞に掲載され、ニーナは大いに喜ぶが、その後がなかなか続かない。次第にフランスも戦雲が濃くなり、1938年、ロマンはフランス空軍に入隊するのだった。
第一次世界大戦後の20年代に女手一つで息子を育てるだけでも大変だが、さらに移民への偏見で、自らが築いてきた商売もうまくいったかと思えば踏みにじられる。それでも全く諦めず、自分はひたすら稼ぐことに専念し、息子のロマンには他人に尊敬されるような作家や大使になるよう叱咤し続ける。このニーナの姿を見ていると、震災や戦争で全てを失うたびに、何度も再起し、息子のために奮闘してきた、テレビドラマ「おしん」がどことなく重なった。そんな強烈な母、ニーナの四半世紀に渡る姿を全身全霊で演じたのは、シャルロット・ゲンズブール(『ニンフォマニアック』『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』)。ポーランド語やポーランド訛りのフランス語を交え、愛情深い肝っ玉母ちゃんを白髪姿も披露しながら熱演、ちょっとエキセントリックな雰囲気を醸し出すあたりは、イザベル・ユペールの後継者と思えるほどの凄みがある。
一方、この強すぎる母の愛を一心に受け、それを絶対的なものと信じ、母からの激励の手紙を支えに戦地でも執筆活動を続けてきたロマンを演じたのは、『イヴ・サンローラン』『婚約者の友人』でその美貌と高い演技力をみせたピエール・ニネ。ヒトラー暗殺命令を真顔で出すような母のために、空軍に入隊して喜ばせるなんて序の口。全ては母のためにという気持ちが、アフリカ、イギリスと戦地を転々としながらも、自身の代表作となる「白い嘘」を書き上げる原動力となった。戦地に届き続ける手紙は、時には枕元の母の幻となり、いつか吉報が届けられる日を夢見て、ロマンの生きる希望となる。一方、病に臥せっても、戦地の息子を励ましたいというニーナの気持ちは、手紙となってロマンの元に永遠に残り続ける。あらためて250通の手紙に込められたニーナの思いを噛み締めたくなる、母と息子の愛の物語だ。
(江口由美)
配給:松竹
公式サイト⇒:https://250letters.jp/
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