原題 | De chaque instant |
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制作年・国 | 2018年 フランス |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | ニコラ・フィリベール |
公開日、上映劇場 | 2019年12月6日(金) ~テアトル梅田、MOVIX京都、12月13日(金)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
看護師という夢に向かって奮闘する姿を生き生きと個性豊かにとらえる
日本でも人気を博した『ぼくの好きな先生』(2002年)の、ドキュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督の最新作。舞台はパリ郊外の看護学校。5か月にわたって撮影。特定の生徒に密着するというのではなく、1年生から3年生まで、年齢や民族、国籍、宗教など様々な生徒たちが、いろんな実習の現場で奮闘する様子を次々ととらえていく。解説も音楽も加えられず、緊張や不安、ほっとした表情、息遣いまでが繊細に伝わる。
看護という、人間の身体を相手に、他者のために働く仕事において、技術や、看護師としての心のありようをどのように身に着けていくのか。とても貴重なドキュメンタリーだ。手の消毒の仕方に始まり、注射器の取扱いといった知識や技術の習得、学生同士の演習となり、実際の患者を相手にした実習へと続く。初めての採血や点滴、抜糸のときの患者の緊張も伝わる。生徒たちが間違えたりしながらも、先輩たちの、厳しくもあたたかい励ましに見守られて、前向きに、目標に向かって努力を重ねていく。
最も印象深かったのが、実習の感想を1対1で教師が聞くシーンだ。教師が、生徒の率直な思いを引き出し、悩みを聞くだけでなく、一緒に笑い、悲しみ、共感し、問いかけて、生徒自身に解決の道を気付かせていくカウンセリングがすばらしい。看護という人間相手の仕事を通して、時に死とも向き合いながら、人間としても大きく成長していく彼らに大いに感銘を受ける。生徒も教師も、面談の場では、おしゃれで自由な服装なのもいい。
誰もが医療と無縁では生きていけない。いつかは病気をし、看護師の世話になる。そんなとき、ふとこの映画に出てくる生徒たちのきらきらした表情を思い出してほしい。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ https://longride.jp/tadaima/
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