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『男はつらいよ お帰り 寅さん』

 
       

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作品データ
制作年・国 2019年 日本
上映時間 1時間56分
監督 原作・監督:山田洋次  脚本:山田洋次 朝原雄三  音楽:山本直純 山本純ノ介  主題歌:「男はつらいよ」渥美清/オープニング 桑田佳祐
出演 渥美清 / 倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 池脇千鶴 夏木マリ 浅丘ルリ子 美保純 佐藤蛾次郎 桜田ひより 北山雅康 カンニング竹山 濱田マリ 出川哲朗 松野太紀 林家たま平 立川志らく 小林稔侍 笹野高史 橋爪功
公開日、上映劇場 2019年12月27日(金)~全国ロードショー
 

~“フーテンの寅”が教える「家庭が原点」~

 
あの懐かしい寅さんが、甦る。第1作から50年目になる2019年、最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』でフーテンの寅さんが久しぶりに“帰宅する”。こんな映画は伝統を誇る松竹でも、長い日本映画史でも見られない快挙だ。
 

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渥美清のフーテンの寅さんも4Kデジタル修復され違和感なく登場する。まるで今も続いているかのように。妹・さくら(倍賞千恵子)も登場し、ファンには感無量の場面がふんだんにある。オーバーに言えば“生きた日本映画史”が目の前で繰り広げられるようだ。
 

冒頭『男はつらいよ』のテーマが流れる。♪俺がいたんじゃお嫁に行けぬ 分かっちゃいるけど妹よ…目方で男が売れるなら、こんな苦労もするまいに~♪と妹さくらへの情愛を歌うシーンに熱い思いがほとばしる。山田洋次監督のたっての願いで「寅さんファン」というサザン・オールスターズ桑田佳祐が思い入れたっぷりに披露していたが、ラストに流れる渥美清版の方がゆとりと幅を感じさせたのはキャリアの違いというよりも「寅次郎本人」には誰もかなわないということだろう。

 
映画では「寅さんは旅に出たまま」まだ帰って来ていないことになっていて、代わってこの映画で主役を張るのは寅さんの“甥っ子”満男(吉岡秀隆)。念願の小説家にはなったが、妻に先立たれ、中学三年生の娘ユリ(桜田ひより)とマンションで寂しい二人暮らし。亡くなった妻の法要で、満男が久々に葛飾の実家を訪れる。柴又帝釈天の参道にある草団子の「くるまや」は親戚が営んでいたが、新しくカフェに生まれ変わり、その裏手に母・さくら(倍賞千恵子)、父・博(前田吟)が暮らし、両親や近所の人々と昔話に花を咲かせている。“昔ながらの寅さんの世界”は健在だった。
 

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中でひょっこり登場するのがフーテンの寅次郎。破天荒な変わり者のおじさんには時折、悩まされることもあったが、満男にはいつも味方でいてくれた。満男は長い間、寅さんに会えず空虚な思いを拭えないでいた。いつも「困ったことがあったらな、いつでも俺の名前を呼べ。どっからでも飛んできてやる」と言って励ましてくれた寅さんは、言葉通り、確かにふと現れては見守ってくれていた…。
 

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ある日、小説家として人気を高めていた満男が行ったサイン会で、そこに並ぶ人の列にかつて結婚の約束までした“初恋の人”イズミ(後藤久美子)がいたから、さあ大変!満男は寅さんの後を継ぐのか?国民的美少女・ゴクミが年月を経ても今も美少女風であり続け、満男のマドンナとして登場するのが嬉しい。だが満男は「妻が亡くなったことはイズミちゃんには言わないで」と周囲に口止めをする。その屈折した心情は不可解だが、それが“初恋の人”への照れなのかどうか?寅さん後継の資格十分だ。
 

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多くの懐かしい面々が再結集して登場する。満男の母=寅さんの妹・さくらと父・博、懐かしいマドンナたち、浅丘ルリ子をはじめ、今も現役の吉永小百合、先ごろ亡くなった八千草薫さんら…。今の浅丘ルリ子が違和感なく登場し、寅さん行きつけのバーでなじみのママと話し込む辺りは、まさに“現在進行形”。満男同様「寅さんは生きている」、と思ってしまう。
 
寅さん産みの親・山田洋次監督は「新たなる“男はつらいよ”の物語は新撮された登場人物たちの今を描く映像と、デジタル修復された寅さんの映像が紡ぎ合う、新たな“男はつらいよ”の物語。見たことのない作品が出来た」と驚くほど、“奇跡の映画”と言うにふさわしい。
 

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先ごろ、同じく50周年を迎えたテレビアニメ『サザエさん』も実写で“その後のサザエさん一家”を描いていた。どちらも当たり前のように“近所”にいたように思うが、寅さんとサザエさんが“同期”とは何とも感慨深い。
 

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かたや家庭に収まらない破天荒な寅さん、一方、愉快で穏やかな家庭の主婦・サザエさん。かけ離れた存在のようだが“愉快なキャラクター”は共通している。サザエさんが日本のホームドラマの典型とすれば、寅さんはホームドラマからはみ出してしまった男。だが、両人ともそこに家庭生活への限りない愛着と郷愁がある。
 
寅さんは日本映画が長年、多くの巨匠たちが描きあげてきた“日本の家庭”へのアンチテーゼ。甦った寅さんは、映画では既に崩壊してしまった家庭に、どんな顔をして帰るのだろうか。  
 
(安永 五郎)
 
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