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『ファイティング・ファミリー』

 
       

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作品データ
原題 Fighting with My Family  
制作年・国 2019年 アメリカ
上映時間 1時間48分 
監督 監督・脚本:スティーヴン・マーチャント 
出演 フローレンス・ピュー、レナ・へディ、ニック・フロスト、ジャック・ロウデン、ヴィンス・ヴォーン、ドウェイン・ジョンソン
公開日、上映劇場 2019年11月29日(金)~大阪ステーションシティシネマ 他全国公開! TOHOシネマズなんば/MOVIX京都/神戸国際松竹

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~家族愛で頂点に上り詰めた女子プロレスラーの奮闘~

 

プロレス、お好きですか? ぼくは中学のときにどっぷりハマり、大阪府立体育館(現在のエディオンアリーナ大阪)で開催される日本プロレスをちょくちょく観に行ってました。ジャイアント馬場が試合終了後、テレビのアナウンサーから勝利インタビューを受けているとき、背中をペタペタ叩いている少年たちが映っていたでしょう。その1人がぼくでした~(笑)。


一番好きなレスラーは、「鉄の爪」こと、フリッツ・フォン・エリック。楽々とリンゴを握りつぶせるアイアンクローを習得しようと毎日、ハンドグリッパーを握りしめて必死のパッチで握力を鍛えていました。それもこれも、「リトル・タケ」というリングネームを持っていたからです。昼休み、教室の後ろで、女子の冷たい視線を浴びながら、プロレスごっこに興じてましたが、手が小さいので、アイアンクローを断念し、ドロップキックに専念。そのせいで体のあちこちにアザやキズが……。アホかいな。


高校に進学しても止められず、「リトル・タケ」は健在でした。しかし運動場の砂場でドロップキップを放ったとき、一目惚れした女の子に目撃され、めちゃめちゃ気恥ずかしくなり……、「こんな子どもじみたことをやってる場合とちゃうわ」ときっぱり現役を引退。とはいえ、試合を観戦するのが好きで、テレビだけでは物足らず、相変わらず会場によく足を運んでいました。


FF-500-2.jpgアカン、アカン。この調子だとプロレスの原稿になってしまいますがな。なんでこんな書き出しになったかというと、この映画、プロレスの物語だからです。それが本場のアメリカではなく、イギリスが舞台。現地ではプロレスが結構、人気ありますよ。ライフワーク「ケルト」の取材でイギリス各地を巡っていて、プロレス興行のポスターや試合会場をちょくちょく目にしました。テレビでも放映されています。


イギリスのプロレスラーといえば、これまた古いですが、日本の国際プロレスで華麗なテクニックを披露し、得意技「人間風車」をバシッと決めてくれた超善玉のビル・ロビンソンが第一人者ですね。ほかにも「爆弾小僧」のニックネームを持ち、スピーディーなファイティングを売りにしていたダイナマイト・キッドもいました。本作はこうしたビッグネームとは無縁の家族経営のプロレスで、無名のレスラーの話です。


FF-500-3.jpgイングランド東部の商業都市ノーリッジで暮らすナイト一家。典型的な労働者階級です。父親リッキー(ニック・フロスト)と母親ジュリア(レナ・ヘディ)はともに元プロレスラーとあって、当然(?)、3人の子も「洗脳」され、その道を歩んでいます。暴力沙汰で刑務所暮らしの長男は最後の方にちょこっと登場するだけ。映画では、次男ザック(ジャック・ロウデン)と末っ子の妹サラヤ(フローレンス・ビュー)がドラマを引っ張っていきます。


冒頭、テレビのチャンネル争いで幼いころのザックとサラヤがケンカを始めた矢先、「おいおい、何やってんねん」と両親が姿を現す。てっきり取っ組み合いを止めさせるのかと思いきや、「もっと腕をうしろにまわせ」、「脇をもっと締め付けろ」といった具合にレスリングの指導を始めるしまつ。オモロイ! この家族の実像が一気に露呈され、映画のテイストがわかった瞬間でもありました。


成人したザックと18歳のサラヤは両親が経営するプロレスの花形レスラーとして活躍しています。家族そろって車で各地を転々とし、リングを設営し、娯楽色満点の「ショー」を見せるのです。2人のコンビネーションは抜群で、観客を大いに沸かせます。興行は水物とあって収入は不安定。ゆめゆめ裕福な暮らしとはほど遠いけれど、ナイト一家はみな楽天的で、羨ましいほどに仲が良い。しかも体育会系のコミカルなノリとあって、観ていてめちゃめちゃ楽しい。


同じイギリスの労働者階級の家族映画でも、社会の構造的問題をあぶり出そうとするケン・ローチ監督の作品とは対極的ですね。もしローチ監督が本作のようなテイストで映画を撮ったら、ぼくは御堂筋を梅田から難波まで逆立ちして歩きていきますわ(笑)。


FF-500-1.jpg兄と妹の夢は、世界最高峰といわれるアメリカのプロレス団体WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)に採用され、人気スターの「ザ・ロック」こと、ドウェイン・ジョンソンと対面すること。この人、今やプロレスラーというより、『ワイルド・スピード』シリーズや『ヘラクレス』などハリウッドのアクション映画に欠かせないマッチョ系の大物俳優として地歩を固めていますね。あの肉体は確かにスクリーンに映える!


このWWEのトライアウト(適性検査)をクリアしたサラヤが渡米し、ホームシックになりながらも、家族の温かいサポートを受けて厳しい訓練に臨んでいく姿が熱っぽく描かれていきます。家族経営のこぢんまりしたプロレスとは異なり、アメリカでは段ちがいにスケールがでっかい。それにショーマンシップが何よりも優先され、イギリスでは考えられないほどにとことん派手! プロレスラーは対戦相手と呼吸を合わせ、仕掛けてくる技をしっかり受けられるように肉体を鍛えています。そのことが映画を観れば、よくわかりますよ。


FF-500-4.jpg異国の地で彼女は金髪に染め、「ペイジ」と改名し、なんとか存在感を示そうとするのですが、外国人であることも影響し、村八分状態になっていきます。そんなサラヤがいかにしてスターダムへと駆け上っていくか――。落選した兄ザックとの確執が色を添えます。気が付くと、〈女子プロレス〉の物語になってるんですよ。たくましい!


この映画は実話です。BBC(英国放送協会)がナイト一家に密着取材して制作したドキュメンタリー番組を、同じプロレス一家だったドウェインが観て感銘を受け、映画化を企画。長年、交友関係を持つ英国テレビ界のスティーヴン・マーチャントに脚本と監督を依頼し、自らプロデューサーに就いたそうです。オマケというか、ドウェイン自身も本人役のプロレスラーで出演しているんですが、もっと出番を多くしてほしかった! もったいない。


格闘技の映画はファイティング・シーンが見せ場。ボクシング映画の金字塔『ロッキー』のように、困難を克服してきた主人公がラストのクライマックスでドカーンとエネルギーを爆発させるというお決まりのルールがあります。そこはプロレスと同じで、ひじょうにわかりやすい。なにせハリウッド資本で製作された典型的な娯楽映画。といっても、あくまでも家族・家庭を軸にしているところが何ともイギリスっぽかったです。


本作を観終わってから、体がムズムズとうずいてきました。無性にドロップキップをしたくなったのです! でもやれば、まず間違いなく骨折か脱臼すると思います。この衝動をどう抑えればええんでしょうか……。


武部 好伸(エッセイスト)

公式サイト⇒ https://fighting-family.com

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