原題 | Ethel & Ernest |
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制作年・国 | 2016年 イギリス・ルクセンブルク合作 |
上映時間 | 1時間34分 |
原作 | レイモンド・ブリッグズ |
監督 | ロジャー・メインウッド |
出演 | 声の出演:ブレンダ・ブレッシン/ジム・ブロードベント |
公開日、上映劇場 | 2019年10月11日(金)~シネ・リーブル梅田、10月26日(土)~京都シネマ、順次元町映画館 にて公開。 |
~戦争を乗り越え、寄り添う夫婦を時代の変化とともに描く~
あたたかい色彩と表情で、世界中の読者を魅了した絵本「スノーマン」、「さむがりやのサンタ」の作家、レイモンド・ブリッグズが、自身の両親の人生を描いた原作を映画化。柔らかな色合いを生かした、心あたたまるアニメーション映画となった。
1928年、ロンドンで牛乳配達の仕事をしていたアーネストは、メイドとして働くエセルに出会い、恋に落ちる。結婚して、郊外に家を構え、子どもが生まれる。第二次世界大戦が起き、防空壕をつくり、子どもを疎開させ…、やがて、息子も結婚して、老いが忍び寄る…。そんな平凡な夫婦の仲睦まじい姿を、丁寧に、淡々と描いていく。
アーネストが読む新聞をとおして、ヒトラーの台頭から、ヒロシマ原爆、イギリスの政党の動きといった社会情勢の変化も描かれ、興味深い。アーネストは、労働党を支援しているが、エセルは保守党びいきで、少し上品ぶっていて、アーネストの言葉遣いを下品だとよく注意する。昔気質のエセルが、成人してからも息子の髪形を注意したり、率直な言葉で息子を呆れさせたり、夫婦の性格の描写もリアルで、共感を呼ぶ。牛乳配達の手押し車が電気車となり、電話や洗濯機やテレビと、日常生活がどんどん変化していくのもおもしろい。
いつも泣いては、陽気なアーネストに慰めてもらっていたエセルが、逆に、戦争中の消防活動ですっかり疲弊して帰ってきたアーネストを優しく抱きとめるシーンは忘れがたい。日本で大ヒットした、太平洋戦争を舞台にした『この世界の片隅に』が、1944年の戦時下に嫁いだすずさんの物語であったのを思い出す。夫婦や家族が互いに助け合って生きていく姿は、国や民族を問わず、愛おしく、静かな感動を呼ぶ。
(伊藤 久美子)
公式サイト→https://child-film.com/ethelandernest/
© Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016