原題 | 原題Grans 英題Border |
---|---|
制作年・国 | 2018年 スウェーデン・デンマーク |
上映時間 | 1時間50分 |
監督 | アリ・アッバシ |
出演 | エヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ、ヨルゲン・トーション、アン・ペトレーン、ステーン・ユンググレーン、ケル・ヴィルヘルムスン、ラーケル・ヴァルムレンデル他 |
公開日、上映劇場 | 2019年10月11日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都みなみ会館、10月25日(金)~シネ・リーブル神戸ほか全国順次ロードショー |
「サスペンス×ラヴ・ストーリー×ファンタジー=!!!」の異色作
ネタバレさせてしまうと、後で観る人のワクワク感を奪ってしまうので、奥歯に物が挟まったような内容しか書けないが、怖いような、温かいような、とっても不思議な世界に触れたなあという思いが残る。ボーダー、まさに境界線を越えてしまった感じ。こっち(日常)に帰ってくるのに少々時間がかかり、その後もあっちへ行ったり、こっちに帰ってきたり。
スウェーデンの税関で働く主人公のティーナ(エヴァ・メランデル)は、独特の容貌の持ち主。容姿に対するコンプレックスを抱きながら育った。だが、彼女は特殊な能力を持っていた。それは、違法の物を持ち込もうとする人間が放つ後ろめたさや緊張感、恐れなどの“におい”を感じ取る鋭敏な嗅覚である。そのため、自分勝手な同居人はいても孤独な人生を強いられているティーナが、仕事場では一目置かれる存在となっていた。そしてある日、ティーナは運命のひと・ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)と出逢うのだが…。
原作・脚本は、『ぼくのエリ 200歳の少女』のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。『ぼくのエリ~』は450ページにもなる作品だったが、こちらのほうは50ページほどの短編。これを、イラン出身の俊英監督アリ・アッバシが、リンドクヴィストと共同で脚本を書き上げ、みごとに映像化。犯罪など社会的な問題や、異端と見られる人間が受ける差別などを絡ませ、物語は先の見えない境地を切り拓いてゆく。ある場面は「ショッキング過ぎる!」と取り沙汰されたそうだが、完全ノーカットで日本公開となった。ヴォーレの意外な正体、ティーナの生い立ちの秘密が明らかになり、ヴィジュアルの衝撃性に驚かされるエンディングへと着地する。
ギレルモ・デル・トロ監督をはじめ、海外では絶賛を送った人も多いそうだが、見終わった後の印象として、好き嫌いがはっきり分かれそうだ。あまりに個性的な人がすごく好かれたり、逆に嫌悪されたりするのと同様だが、私は好きだな、この映画。主演二人に施されたメイクアップ術も高く評価され、「北欧ノワール」と呼ばれる映画の系譜に、また一つ忘れ難い作品が加わったといえよう。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://border-movie.jp/
(C)Meta_Spark&Karnfilm_AB_2018