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『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

 
       

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作品データ
原題 EIGHTH GRADE
制作年・国 2018年 アメリカ
上映時間 93分
監督 ・脚本:ボー・バーナム
出演 エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン他
公開日、上映劇場 2019年9月20日(金)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、MOVIXあまがさき、シネ・リーブル神戸他全国順次公開
 
 

~SNS世代でも、思春期の悩みは変わらない~

 
 自信たっぷりの笑顔で、流暢に、なりたい自分になるためのポイントを説明する少女。最後の決め台詞「グッチー!」と共に、動画は終わる。今流行りのユーチューバーにチャレンジしているヒロイン、ケイラの積極性が冒頭に映し出され、さぞやノリノリの学校生活を送っているのかと思いきや、現実はむしろ真逆。クラスで一番無口な子に選ばれてしまうほど、身の置き所のないような学校生活を送っているのだ。SNS世代ならではの自己表現や悩みを赤裸々に映し出しながらも、思春期の悩みはいつの時代も変わらないなと妙に共感を覚えてしまう、等身大の青春映画。ユーチューバー出身の若き俊英、ボー・バーナム監督の初長編作は、思春期ならではの自意識過剰と「クールになりたい」願望を生々しくも軽やかに映し出す。
 
 
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 父と二人暮らしのケイラは、自分の悩みを相談できる人がいない。SNSやユーチューブでどれだけ発信しても、誰もいいね!をくれず、視聴してもらわなければ意味がないのだ。それでも、ケイラは真っ暗の自分の部屋でMacBookを開き、日々SNSのチェックをおこたらない。一方、学校でイケてるグループの女子に頑張って話しかけても、空回りしてばかり。なんとか誘ってもらったクラスの人気女子、ケネディのプールパーティーで、スレンダーなビキニ女子たちがはしゃぐ中、ワンピースの水着から、お尻のお肉がはみだし、自信なさそうにその輪に入っていくケイラは、若き日の自分を見るようで、その浮きっぷりを見ると、胸がぎゅっと締め付けられる。ただ、悪いことばかりではない。そこで意外な男子との出会いもあるのだった。
 
 
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 エイスグレードというのはアメリカの中学2年生で、日本で言えば中学3年生、次年度から高校生になる境目の年だ。中学の狭い世界で密かにもがくケイラを心配する父、マークは家ではパソコンにかじりついてばかりの娘から遠ざけられてばかり。手を差し伸べたくてもどうすればいいのかわからない焦りが伝わってくる。一方、ケイラにも転機が訪れる。高校体験の学校体験プログラムでペアを組んだ案内役のオリヴィアに「あなたはとてもクール」と褒められ、彼女自身も高校に入って自分らしくいられるようになったとケイラを遊びに誘ってくれるのだ。
 
 

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 スクールカーストという言葉があるぐらい、学校生活ではイケてるグループ、イケてないグループと暗黙のグルーピングがなされてしまうが、そんなものは長い人生の中ではほんの一瞬のこと。それが永遠に続くような気がして、自分がどう見られているのかが気になって仕方がないのが思春期だ。不器用ながらも、リアルの世界で男女問わず関わりを持ち、ちょっと大人になることを経験する中で、ケイラも一番信頼すべきなのは、いつも自分のことを心配してくれる父であることに気づく。オバマ前アメリカ大統領が2018年の年間ベスト映画に選出したという謳い文句に、どこが胸に響いたのだろうかと思いながら見ていたが、思春期の娘を持つ父親として、娘の悩みに触れたような気持ちになったのではないか。SNSで学校以外の生活まで飛び込んで来るようになり、常に見られている感がつきまとっているのではないかと思う。それに慣れた世代なのだろうが、見られる自分を気にするよりも、他者とは違う自分を自分で見つけて、そこに水をあげてほしい。もしくは、そこに気づいてくれる人に出会ったとき、その人を手放さないでほしい。不器用ながら私らしさを模索するケイラに大きなエールを送りたい作品だ。
(江口由美)
 

公式サイト⇒:http://www.transformer.co.jp/m/eighthgrade/ 

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