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『永遠に僕のもの』

 
       

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作品データ
原題 EL ANGEL
制作年・国 2018年 アルゼンチン=スペイン
上映時間 115分
監督 ルイス・オルテガ
出演 ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス
公開日、上映劇場 2019年8月16日(金)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸、大津アレックスシネマ他全国ロードショー
受賞歴 第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品作
 
 

~天使の顔をした殺人者を鮮やかに描く新感覚クライムムービー〜

 
 ブロンドのカーリーヘアに、少しポッテリとした艶やかなくちびる。今、人気の若手スター、ティモシー・シャラメを引き合いに出したくなるような、アルゼンチンの美しき新星、ロレンソ・フェロの魅力が弾ける。1970年代に実際に起き、大センセーションを巻き起こした連続殺人事件を映画化。スペインの名匠、ペドロ・アルモドバル(『オール・アバウト・マイ・マザー』『抱擁のかけら』)が製作に加わり、赤が印象的なスタイリッシュな映像も魅力的だ。アルゼンチンでスーパーヒットを記録した、天使の顔をした殺人者の衝動と快楽の果て。その危うい無邪気さは、まさに衝撃的だ。
 
 
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 誰もいない豪邸のリビングで、ご機嫌に踊る少年、カルリートス(ロレンソ・フェロ)。空き巣に入った家で盗みを働いては、盗んだ物を友達にあげたりする。生きるためにではなく、遊びの一つでもあるかのように盗みを繰り返したカルリートスは、転校先でワイルドな魅力を放つラモン(チノ・ダリン)に出会う。仲良くなり、ラモンの自宅に招かれたカルリートスは、ラモンの父を紹介されるが、彼こそ犯罪のプロだった。カルリートスに銃の打ち方を教えたラモンの父は、ラモンとカルリートスを連れて大きな盗みを次々とする中、カルリートスは銃で殺しをしてしまう。
 
 
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 カルリートスが何よりも大事にしたのは、親友もしくは、ひょっとしたらそれ以上の感情を持っていたのかもしれないラモンとの時間だ。ラモンと二人のじゃれ合うような時間が終わり、ラモンがパトロンの力で俳優デビューするエピソードも登場するが、その時点でカルリートスは楽しかった日々が幻のように感じられたかもしれない。それでも、まだカルリートスには帰る場所があった。母が作ってくれた大好物のミラノ風カツレツを美味しそうに食べる姿は、どこにでもいる少年そのもの。絶望的な孤独という訳ではない。一方、カルリートスの持ち物や、行動に不信感を抱きながらも、彼の言い訳を信じようとした両親の姿を見ると、複雑な心境になる。もっと積極的に自分の息子に関わっていればと。
 
 
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 理由もなく突発的に殺し、犯罪のスリルと達成感を謳歌するカルリートスを鮮やかに見せるルイス・オルテガ監督の手腕も見事。途中で重大な別れが訪れるまでは、カルリートスの内なる情熱を示すかのような赤色が、時には下着のパンツにまで施され、犯罪をすることで自分の存在意義を見出しているようにも映る。何が起きても飄々と、不敵な笑みを浮かべていたカルリートスが最後に流す涙に、ようやく彼の人間らしさを見た。
(江口由美)
 
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