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『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』

 
       

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作品データ
原題 原題:Tuntematon sotilas
制作年・国 2107年フィンランド
上映時間 2時間12分
原作 原作:ヴァイニョ・リンナ「アンノウン・ソルジャー」
監督 監督・脚本・プロデューサー:アク・ロウヒミエス『4 月の涙』  撮影:ミカ・オラスマー『アイアン・スカイ』
出演 エーロ・アホ『4月の涙』、ヨハンネス・ホロパイネン、アク・ヒルヴィニスミ、ハンネス・スオミ ほか
公開日、上映劇場 2019年8月2日(金)~シネ・リーブル梅田、8月3日(土)~京都シネマ 他全国順次公開

 

フィンランド史上最大の激戦となった第二次世界大戦の対ソ連戦、

国土奪還に燃える戦士たちの知られざる戦闘

 

最近、日本からヨーロッパへ最速で行ける空港としてよく利用されるようになったフィンランドのヘルシンキ空港。フィンランドといえばムーミン、サンタクロース、アキ・カオリスマキ監督、映画『かもめ食堂』を思い浮かべ、森と無数の湖が点在する自然豊かな国である。白夜の短い夏が旅行シーズンだが、映画『雪の華』でもその美しさが際立っていたオーロラとウィンタースポーツも有名。そんなのどかなイメージのあるフィンランドにも、かつて過酷な激戦の歴史があった。


un-500-1.jpg第二次世界大戦中の北欧4か国は、ノルウェーとデンマークはナチスドイツに対抗するもすぐに制圧されてしまい、スウェーデンは中立を保ち、フィンランドはドイツと手を組みソ連と戦っていた。1939年9月にドイツによるポーランド侵攻によって勃発した第二次世界大戦は、瞬く間にヨーロッパを制圧し、北アフリカやイギリスへと戦禍を広げていった。そして、1941年6月ドイツのソ連侵攻と共に、フィンランドはソ連と戦うことになる。1944年9月まで続いたこの戦いは「継続戦争」と呼ばれている。


un-500-2.jpgこの戦争の前にフィンランドは、1939年11月~翌年3月までの「冬戦争」で、今のロシアとの国境線より東にあるカレリア地方を含む広大な領土をソ連に占領されてしまっていた。「敵の敵は味方?」ということで、領土奪還のためソ連を敵とするドイツと手を組んだ次第。ところが、一時期領土を奪還し旧国境を越える勢いを見せたが、ドイツ軍のソ連侵攻の失敗や連合軍の進軍に伴い、ソ連軍に再び大攻勢をかけられ、1944年9月に敗戦を迎える。フィンランド人にとって、敗戦の痛みを後世へ引き継ぐことは、アイデンティティの再認識と戦争がもたらす恐怖と悲しみと虚しさを世界に発信することになる。


un-500-4.jpg幼い子供たちと身重の妻を農場に残して戦場に赴くロッカ(エーロ・アホ)は、ベテラン兵としてどんな窮地でも生き延びる運の強さを見せて、本作の主軸となっている。婚約者をヘルシンキに残して最前線に出た若きカリルオト少尉(ヨハンネス・ホロパイネン)は、結婚式の後もすぐに戦場に戻り捨て身で戦う。そして、常に冷静で最後まで率先して隊を率いたコスケラ大尉(ジュシ・ヴァタネン)。誰一人として派手な活躍をするヒーローとして描いている訳ではない。想像を絶する過酷な戦場での兵士たちの一人一人の人間性を、前代未聞の物量作戦で捉えた滋味深い映像は、まばたく間も与えぬ大迫力で終始圧倒する。


un-500-7.jpg本作は様々な状況で空しく散っていった無数の兵士たちへの壮大なレクイエムとして、フィンランド本国ではハリウッドの大作映画を大きく凌ぐ大ヒットとなったらしい。18年前、サンクトペテルブルク(旧レングラード)から列車でヘルシンキへ行ったことがある。車窓から見えた森と湖ののどかな風景が、かつてフィンランド人が領土奪還を賭けた激戦地だったことを思えば、今なおロシアの領土であることが切なく胸に迫ってくる。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://unknown-soldier.ayapro.ne.jp/

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