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『ゴールデン・リバー』

 
       

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作品データ
原題 THE SISTERS BROTHERS
制作年・国 2018年 フランス・スペイン・ルーマニア・ベルギー・アメリカ 
上映時間 2時間2分
原作 原作:パトリック・デウィット(「シスターズ・ブラザーズ」創元推理文庫刊)
監督 監督・脚本:ジャック・オーディアール(『預言者』や『君と歩く世界』『ディーパンの闘い』)
出演 ジョン・C・ライリー(『僕たちのラストステージ』)、ホアキン・フェニックス(『ビューティフル・デイ』『ドント・ウォーリー』)、ジェイク・ギレンホール(『ブロークバック・マウンテン』『ボストン・ストロング~ダメな僕だから英雄になれた~』)、リズ・アーメット(『ナイトクローラー』『ヴェノム』)、ルトガー・ハウアー(『ブレードランナー』『聖なる酔っぱらいの伝説』)
公開日、上映劇場 2019年7月5日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
受賞歴 第75回ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞〈監督賞〉受賞!、第44回セザール賞〈監督賞・撮影賞・美術賞・音響賞〉受賞!

 

フランス人監督が贈る、追いつ追われつの異色西部劇。

黄金をめぐる4人の人生観の変化と予想を裏切る結末に大注目!

 

ゴールドラッシュの頃のアメリカ西部を舞台に、「シスターズ」という名のイカツイ顔の殺し屋兄弟(ブラザーズ)と黄金をめぐる物語。これを『預言者』や『君と歩く世界』『ディーパンの闘い』などと発表される度にカンヌ国際映画祭やセザール賞など国際的に絶賛されているあのジャック・オーディアール監督が撮ったというから、見逃す手はない! そこには、二人の兄弟とターゲットとなる科学者と殺しのサポート役の男4人の人生と思惑が色濃く活写され、予想を裏切る展開に思わぬ感動を呼ぶという異色西部劇である。


GR-500-1_r1_c1.jpg大胆不敵でキレやすく大酒飲のみの弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)と、堅気の生活を望みながらも弟を見捨てることなく面倒をみている心優しい兄イ―ライ(ジョン・C・ライリー)の二人は、最強の殺し屋としてどんな修羅場も生き抜いてきた。そんな二人に地域を治める提督(ルドガー・ハウアー)から、黄金採取の秘薬を発明した科学者ハーマン(リズ・アーメッド)の殺しを依頼される。


GR-500-3_r1_c1.jpgそのハーマンが殺される前に化学式を聞き出す役目がジョン(ジェイク・ギレンホール)だったのだが、黄金採掘現場へ向かう道中、ハーマンが提唱する「暴力に支配されない社会を創る」というユートピア論にすっかり同調してしまう。ハーマンとジョンを追うシスターズ兄弟も、チャーリーの酒癖の悪さからトラブルに巻き込まれ、さらに提督が新たに差し向けた殺し屋部隊との銃撃戦でチャーリーが片腕を失うという痛手を負ってしまう。


GR-500-4_r1_c1.jpg本作は、原作に惚れ込んだジョン・C・ライリー自らが制作・主演し、鋭い洞察力と深い人物描写で定評のあるフランスのジャック・オーディアールに監督をオファー。監督にとっては初めてのハリウッド製作だったが、そこはリアリティにこだわってきた監督らしく、いたるところで個性が光る。まず闇夜の荒野での銃撃戦をロングで捉えたオープニングシーンでは銃口の光しか見えない。状況がまったく分からないまま主人公の兄弟が登場し、非情なまでのタフガイぶりを印象付ける。その後の夜の馬小屋や山中での銃撃戦シーンなど、ランプや焚火の灯りの照度で撮影。わざわざ照明を当てた撮り方はしない。自然のままの状況こそ緊迫感が増幅するというもの。

GR-500-6_r1_c1.jpgそして、4人のキャラクターを性格付ける会話が堪らなく可笑しい。特にシスターズ兄弟の会話は、ロマンチックな兄イーライに対し、狂暴だが兄に甘えている弟チャーリーとの関係性をよく表している。父親から激しいDVを受けながら育った兄弟は、「あのオヤジのお陰で平気で殺し屋をやっていける」と言いのけ、また、口の悪いチャーリーに「女からもらったスカーフをこっそり出しては匂いを嗅いでいる」とからかわれて、「プライバシーの侵害だ!」と切り返すイーライ。野宿しながら旅を続ける兄弟にプライバシーも何もあったもんじゃない。さらに、人生を諦め気味のジョンが、ハーマンの巧みな弁舌にはまるあたりもまた、弱い心理面を突いていて面白い。4人の個性派俳優たちもそれまで見せたことのない人間味を出して楽しませてくれる。


GR-500-5_r1_c1.jpg黄金を前にして錯綜する欲望の果てに明らかになるものとは――予想を裏切るラストに、本当の幸せとは何か、人生で大切なこととは、運命を左右するものとは――と、西部開拓期という時代こそ違えど、どんな状況下でも生き抜くパワーこそ、最後に幸せを噛みしめられるのではと考えさせられた。やはりヨーロッパ人が撮った西部劇はひと味もふた味も違う!人間を、人生を考えさせる感動のヒューマンドラマとなった。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ https://gaga.ne.jp/goldenriver/

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