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『アマンダと僕』

 
       

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作品データ
原題 Amanda  
制作年・国 2018年 フランス
上映時間 1時間47分
監督 ミカエル・アース
出演 ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、ステイシー・マーティン、オフェリア・コルブ、マリアンヌ・バスレー
公開日、上映劇場 2019年7月5日(金)~シネ・リーブル梅田、7月6日(土)~京都シネマ、7月19日(金)~シネ・リーブル神戸

 

~消えない悲しみを抱いて、希望に向かって歩き出す二人~

 

身近な肉親を突然亡くす悲しみほど、深いものはない。7歳のアマンダは、パリのテロで、シングルマザーの母を亡くし、母の弟のダヴィッドに面倒をみてもらうことになる…。


amanda-5.jpgぽっちゃりした頬に、大きな瞳のアマンダから目が離せない。夜中に泣き出したり、母の歯ブラシや化粧品を捨てたダヴィッドに激しく怒ったり、遊びに行けなくてすねたり‥、突然いなくなった母に会えない現実を、幼いなりに懸命に受け止めようと、ひとりぼっちの辛さをぐっとこらえて、ダヴィッドに見せる大人びた健気な表情に、引き込まれる。


amanda-500-3.jpg24歳の若さで、いきなり幼い女の子の面倒をみることになったダヴィッド。どう接したらいいのか戸惑いながらも、精一杯アマンダの世話をみようとする。つきあい始めたばかりの恋人レナもテロで傷を負い、故郷に帰ってしまい、駅でいきなり涙があふれたり‥。


amanda-500-1.jpg映画は、二人が感情を露わに、泣いたりする姿をさらりと見せながらも、公園で遊んでいる楽しそうな姿もとらえる。失意の底に沈む時もあれば、明るく笑える時もある…。そんなふうに、愛する人を喪った哀しみと、今を一緒に過ごせる人がいる喜びとの間を、いったりきたりしながら、毎日を育んでいく二人の心の機微を丁寧にすくい取り、繊細に描く。夏のパリの柔らかな日差しが優しく降り注ぐ。


amanda-500-4.jpg大人であっても、悲しみを前に感情をコントロールできない時はある。大人と子ども、年齢が離れた二人が、思いやりを忘れず、優しく寄り添い、支えあいながら、時間をかけて、ゆっくりと悲しみと向き合っていくさまに、立ち会っているようで、深く静かな感動を呼ぶ。旅先のロンドンで、二人が自転車に乗って川辺を走るシーンでは、追い抜いたり、追い抜かれたりの繰り返しが美しい。ウィンブルドンで見せるアマンダの涙は、それまで我慢していた悲しみが一気にあふれ出すようで、涙を禁じ得ず、そのあとのまぶしい笑顔は、いつまでも消えない余韻を残す。


(伊藤 久美子)

 公式サイト⇒ http://www.bitters.co.jp/amanda/

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