原題 | Marlina the Murderer in Four Acts |
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制作年・国 | 2017年/インドネシア・フランス・マレーシア・タイ |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | 監督・脚本:モーリー・スリヤ |
出演 | マーシャ・ティモシー、パネンドラ・ララサティ、エギ・フェドリー、ヨガ・プラタマ |
公開日、上映劇場 | 2019年6月22日(土)~シネ・ヌーヴォ、6月29日(土)~京都シネマ 他全国順次公開 |
受賞歴 | 2017年フィルメックス最優秀作品賞、2018年アカデミー賞外国語映画賞インドネシア代表 |
~寡黙なヒロインの勇気と闘いぶりに喝采!~
インドネシアから威勢のいい西部劇がやってきた。イタリアが“マカロニ・ウェスタン”なら、こちらは“ナシゴレン(焼き飯)・ウェスタン”。2017年の東京フィルメックスで最優秀作品賞に輝いた話題作。
主人公は、荒野の一軒家に住む美しい未亡人マルリナ。ある日、いきなり無法者の男たちがやってきて、大切な家畜を奪い、全員でマルリナを手込めにすると言い放つ。その前に、飯をつくるよう命じられたマルリナは、毒入りスープを飲ませて、男たちの命を奪い、頭領の首を刎ねて、危機を脱する。正当防衛を証するため、遠く離れた警察に自首しようと旅に出たマルリナの後を、残党の青年が、頭領の仇を討とうと、追いかけてくる…。
マルリナの人物造形がユニーク。無口で無表情で、何をしでかすかわからない。頭領の生首をぶらさげてたたずむ姿のシュールなこと。その行動は大胆で度肝を抜くが、本人は至って淡々としていて、そのギャップがおもしろい。
舞台となったインドネシアのスンバ島は、荒涼とした丘陵が連なり、マルリナが馬に乗って一本道を進んでくるのをとらえたロングショットが美しい。スンバ島には、死体をミイラ化する風習があり、生と死が隣り合わせにあるような、独特な室内の空気感をとらえたカメラも秀逸。緑のない乾いた大地を進むバスを俯瞰でとらえたショットも心地よい。
出産間近で、夫に冷たく虐げられていたノヴィがマルリナに会い、残党との争いに巻き込まれる中で、マルリナの血が乗り移ったかのごとく、思いがけない行動に出る…。監督は、36歳の女性、モーリー・スリヤ。本作について「フェミニズムに対する賛歌です」と語る。手荒な男たちの暴力に屈することなく、女たちが、窮地で巻き返し、ぶった斬る姿は、爽快で、最後は、不思議なユーモアと希望の後味が残る。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ https://marlina-film.com
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