原題 | A casa tutti bene |
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制作年・国 | 2018年 イタリア |
上映時間 | 1時間47分 |
監督 | ガブリエレ・ムッチーノ |
出演 | ステファノ・アコルシ、カロリーナ・クレシェンティーニ、エレナ・クッチ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、クラウディア・ジェリーニ、マッシモ・ギーニ、サブリナ・インパッチャトーレ、イヴァノ・マレスコッティ、ジュリア・ミケリーニ、サンドラ・ミーロ、ジャンパオロ・モレッリ、ステファニア・サンドレッリ、ヴァレリア・ソラリーノ、ジャンマルコ・トニャッツィ他 |
公開日、上映劇場 | 2019年6月21日(金)~Bunkamuraル・シネマ、7月5日(金)~テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、7月6日(土)~京都シネマほか全国順次ロードショー |
~皮肉のエッセンスもたっぷり!ゴタゴタ一族のイタリア式愛憎劇~
冒頭から出てくるわ、出てくるわ、総勢20名!「人物、多すぎ!」と思いきや、誰と誰がどんな関係にあって、どんな確執や問題を抱えているのかがじわじわとわかってくるのは、バランスの良い人物描写に配慮した演出の巧みさによるものだ。『幸せのちから』(2006年、ウィル・スミス主演)ほか、ハリウッドでの作品づくりが注目されたガブリエレ・ムッチーノ監督がイタリアに戻って、面白おかしく見せるエンターテインメントの骨組みに、イタリア色を鮮やかに塗り込んで作り上げた、可笑しくもほろ苦い群像劇。イタリア映画界の新旧の名優たちが奏でる、演技アンサンブルに注目してほしい。
イタリアのイスキア島に向かうフェリー乗り場に、久々の再会を喜び合う人々が集まってくる。島に暮らすピエトロ(イヴァノ・マレスコッティ)とアルバ(ステファニア・サンドレッリ)の金婚式を祝うために駆けつけた家族や親族一同(元親族も含む)だ。このおめでたいイベントを何事もなく済ませ、「はい、さようなら」と島を後にするはずだったが、悪天候のためにフェリーが欠航し、一同は島に缶詰めされることに…。
元妻と現在の妻の間でウロウロする男、もうすぐ子供が生まれるのに経済的ピンチを抱えている夫婦、愛人の存在を妻に隠しながらうまく立ち回ろうとする男、認知症の夫の世話に心身とも疲れ果てている女ほか、さまざまなトラブルが露呈してくる。そんな大人たちの、ある意味で深刻、ある意味で喜劇的なゴタゴタを、十代のカップルが冷ややかに見ているという構図が、実に面白い。
一晩だけだったらもめることもなかったのに、というのは、家族旅行などでも同じだろう。家族旅行は二泊まで、三泊以上になるときっともめる、というのは私の体験からでも言えること。いつもと異なる空間にいて、顔も見たくない人間もいて、不本意な“待て!”の姿勢を強いられた彼らの右往左往を、美しいイスキア島の風景とともにじっくりとご覧あれ。さらに、音楽が始まるとみんなが集まってきて歌い出すとか、騒動続出の状況の中でも愛を交わし合うミドル世代だとか、俗なイタリアっぽさを逆手に取って笑いを誘うってところも可笑しい。
恋愛、結婚、家庭、家族って何だろう?なんて問いを真正面から突きつけてくるわけではない。だって、人それぞれだもの。監督もきっとそう思っている。「普通の人生なんて無い」という台詞がそれを証明しているのではないか。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://salute-movie.com/
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