原題 | Tout le Monde Debout |
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制作年・国 | 2018年 フランス |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | フランク・デュボスク |
出演 | フランク・デュボスク、アレクサンドラ・ラミー、エルザ・ジルベルスタイン、ジェラール・ダルモン、キャロライン・アングラード、ローラン・バトー、クロード・ブラッスール、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン他 |
公開日、上映劇場 | 2019年5月24日(金)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国順次ロードショー |
~“嘘から出た真の恋”を描く七転八倒コメディ~
「嘘をついたら、閻魔様に舌を抜かれますよ」なんて言われて育ち、舌を抜かれる痛さや怖さを想像して震え上がり、自分はけして嘘などつかない、本当のことだけを言うんだと決心した幼児期の思い出を持つ人もいるだろうが、いろんな体験をしておとなになった人間は、それを守り抜けるほど純ではない。嘘はつきたくないと思っていても、自分を守るため、あるいは他人を悲しませないために嘘をつき、あるいは、訪れる状況次第で、信念はどこへやら、相反する言葉を口走る。大嘘つきの政治屋なんてのも、山ほど存在するものね。そして、この映画の主人公だが、つい口を滑らせたことによって、とんでもない状況へと自分を追い込むはめになる。
パリで大手シューズの代理店に勤めるジョスラン(フランク・デュボスク)は、リッチな生活を送るビジネスマン。美しい女性を見るとすぐ声をかけたり、誘うアクションをしてみたり。でも、本気の恋愛や結婚から逃げ続けて今日に至っている。そんな彼の母親が亡くなり、母の家で母が使っていた車椅子に座っていた時、若き美女ジュリー(キャロライン・アングラード)が現れる。ジョスランは彼女の気を引くため、つい「車椅子の生活だ」と言ってしまう。少しずつジュリーとの距離が縮まってきたある日、ジョスランは、ジュリーの姉フロランス(アレクサンドラ・ラミー)を紹介されて驚く。事故で歩けなくなったフロランスこそ、本当に車椅子を手放せない人だった…。
いったんついてしまった嘘に振り回される主人公のおかしさを、コメディアンでもあるフランク・デュボスクが軽妙に描き出す。自宅プールでのロマンティック度過剰の演出も、滑稽の域に誘うほどだ。それでいて、次第にフロランスに惹かれていくジョスランが、以前のジョスランなら持ち得なかった悩ましさを抱え始めることや、けしてもう若者とはいえないジョスランとフロランスの間に漂う甘酸っぱさをまとった恋の空気が、物語の絶妙なスパイスとなって観る者の胸の奥を突っつく。ところが、フロランスもまた“ある事実”をジョスランに隠していたというオチがあり、これがまたなかなかイイのである。
車椅子生活だといっても、ヴァイオリニストという仕事を持ち、車椅子テニスも楽しむ快活なフロランスを演じたアレクサンドラ・ラミーがとても素敵だ。また、ジョスランの秘書マリー役はエルザ・ジルベルスタイン。マリーはある告白をするのだが、その切なさは物語の裏声のようで、印象的である。そのほか、ジェラール・ダルモン、クロード・ブラッスールなどフランス映画界を支えてきた名優たちと出会えるお薦めの作品だ。
(宮田 彩未)
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