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『バースデー・ワンダーランド』

 
       

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作品データ
原題 CHIKASHITSU KARA NO FUSHIGINA TABI   
制作年・国 2019年 日本
上映時間 1時間55分
原作 柏葉幸子「地下室からのふしぎな旅」(講談社青い鳥文庫)
監督 監督:原恵一 脚本:丸尾美穂 配給:ワーナー・ブラザース映画
出演 松岡茉優、杏、麻生久美子、市村正親
公開日、上映劇場 2019年4月26日(金)~大阪ステーションシティシネマ、他全国ロードショー

 

この世界に生まれた特別な日の冒険を通じて、
人生の輝きを謳う。

 

世界的な評価も高い原恵一監督の、前作「百白紅~Miss HOKUSAI~」から4年ぶりとなる新作は、本格的なエンターテイメント。改めてその才能の豊かさに驚かされた。柏葉幸子の児童文学「地下室からのふしぎな旅」を、原監督とはこれまでもコンビを組んできたベテラン丸尾みほがシナリオ化。「不思議の国のアリス」を彷彿とさせるシチュエーションながら、少女の冒険を通じて、誰もが生きること、生きてきた日々に思いを馳せ、この先に続く未来を信じさせてくれるチカラに満たされるような、不思議な感触が味わえるアニメーション映画だ。
 

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主人公は小学6年生の少女アカネ(松岡茉優)。自分に自信がなく、学校生活に息苦しさを募らせている。誕生日の前日、もやもやした気分から抜け出せなくてズル休みをしてしまう。娘の様子に気づかないふりの母親ミドリ(麻生久美子)は、叔母・チィ(杏)の店「骨董屋ちゅうとはんぱ」へアカネをお使いにだす。趣味と実益を兼ねた人生を謳歌しているチィは、世界中を旅して、気に入った雑貨やアンティークばかりを買い込んでくるので、店の雰囲気はちょっとした異空間。と思ったら…。ペルシャ絨毯に覆われた床下に広がる地下世界からシルクハットの男、大錬金術師ヒポクラテス(市村正親)が現れて、彼らの住む色彩豊かな平和の世界「ワンダーランド」から色が失われつつあること、救えるのは「緑の風の女神」だけなのだと言う。そしてその救世主こそがアカネなのだと…。


BW-500-5.jpgいきなりの展開に尻込みするアカネに、ヒポクラテスから「前のめりの錨」なる首飾りをかけられたとたん…。嫌なことは、大人の後ろに隠れていればやり過ごせたはずが、そんな子どもじみた手はもう通用しないのだった。かくして、向こう見ずな自由人のチィとともに地下から異世界「ワンダーランド」への冒険に旅立つことに。だが、その行く手には謎の破壊者ザン・グが立ちはだかる。


BW-500-2.jpg見たこともないのに、どこか懐かしさを感じさせるランドスケープ。もふもふ羊、巨大金魚にピンク色のペリカン。時空を操るクモや入国審査をするネコなど、ユニークでかわいいキャラクターには目を引かれる。原監督が、今作で初めてタッグを組んだ新進気鋭のロシア出身のイラストレーター、イリヤ・クブシノブによるアカネ、チィ、ミドリの女性キャラクターはとりわけ印象的。彼女たちの凛とした端正な面立ちからは、さまざまな感情が呼び覚まされる。


BW-500-4.jpg誰のものでもない人生を自分の足で歩いていく。そんな当たり前のことが、難しく感じられる現代。「ワンダーランド」に迫る危機を救うため勇気をふりしぼる少女の冒険の数々に、予測不能の人生の醍醐味がある。迷っても、立ち止まってもいい。心が信じる未来に、1歩踏み出すことが大切なのだ。


(柳 博子:映画ライター)

公式サイト⇒ http://birthday-wonderland.jp

(C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会