制作年・国 | 2018年 日本 |
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上映時間 | 1時間43分 |
監督 | 岩合光昭 |
出演 | 立川志の輔、小林薫、柴咲コウ、田中裕子、柄本佑、銀粉蝶、山中崇、葉山奨之、ベーコン他 |
公開日、上映劇場 | 2019年2月22日(金)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸ほか全国ロードショー |
猫好きの心をくすぐる絶妙のショットに、
幾つもの人間ドラマを交差させる
世界を巡ってその土地の猫たちの姿をとらえるテレビのドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」が好評を博したが、その岩合さんがこのたびフィクション映画で初監督を果たした。猫たちの愛くるしい表情や行動、猫世界と人間世界の接点から生まれるほんわかとした空気感を楽しんでほしい。
海に囲まれた緑豊かな宮ノ島に暮らす春山大吉(立川志の輔)は、その名の通り明るく、けっこう能天気な性格の元校長で、島民からも親しまれている。妻のよしえ(田中裕子)に先立たれ、息子の剛(山中崇)は東京にいるのだが、愛猫のタマ(ベーコン)と仲良く日々を送っていた。自ら料理を作り、タマと散歩し、猫が苦手な親友の巌(小林薫)をはじめ慣れ親しんだ島民たちと他愛ない会話を楽しむ、いわば悠々自適の生活ぶりである。ところがある日、都会からやって来た美智子(柴咲コウ)が小粋なカフェをオープンし、この島に新鮮な風を持ってきたのだったが…。
熟年男女が心に秘めている不器用な恋、進学で島を離れる少女と島に残る少年の甘酸っぱい別れ、年老いた大吉のことを案じる剛の優しさ、顔を合わせばケンカばかりしているおばちゃん二人の心情の機微。それらをモザイク模様のように組み合わせながら、島に多く住みついている猫たちの様子に照射させる。何だか、猫たちが言葉を発しない狂言回しのようにさえ見えてくる。一人だけ正体不明なのが、美智子という存在。美人で明るくて気配りができて料理がうまい彼女はどうしてこの島にたどり着いたのか、都会では何をしていたのかなど一切明かされない。他の島民とは違う新参者であるだけに、彼女のバックグラウンドが少しは物語に寄ってこないと、添え物的な人物像から抜け出せない。そこが惜しい。
何か考え込んでいるような、ふてぶてしいともいえる超然としたタマの顔つき(猫って、こういう哲学的な表情をするんだなあ!)と、尻尾をぴんと立て、短めの足でちょこちょこ歩く様子に、ついにんまり!タマ役のベーコンは、オーディションで岩合さんのお眼鏡にかない、100匹以上の猫の中から選ばれたそうだ。
原作はWEBで配信の、ねこまきによる同名コミック。映画のほうの結末は、老いを認識した上での爽やかな決断が、大吉さん&タマへの応援歌のようで、ほのぼのとした気分にさせてくれる。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://nekojii-movie.com/
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