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『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

 
       

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作品データ
原題 MARY,QUEEN OF SCOTS
制作年・国 2018年 イギリス 
上映時間 124分
監督 ジョーシー・ルーク
出演 シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー、ジャック・ロウデン、ジョー・アルウィン、ジェンマ・チャン、イアン・ハート、ジェームズ・マッカートル、ガイ・ピアーズ他
公開日、上映劇場 2019年3月15日(金)~TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー

 

~本当は分かり合える唯一の人のはずだった〜

 
生後6日でスコットランド女王、16歳でフランス国王妃となり、未亡人となった18歳でスコットランドに帰国後イングランドの王位継承権を主張した、美貌の女王メアリー。25歳で即位してから「国と結婚をした」と生涯独身を貫き、死ぬまでイングランドの女王であり続けたエリザベスI世。『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は、周りの陰謀から身を守り、王位を守ろうと葛藤したメアリーと、彼女が唯一頼ることができる相手であり、最終的には処刑の命を下したエリザベスI世との数奇な運命を描いた歴史物語だ。
王位継承の正当な血筋であるメアリーと、庶子のエリザベス。それぞれの出自による気質も含め、シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビーが繊細かつ大胆な演技で、伝説の女王を見事に蘇らせている。ケイト・ブランシェットが2度に渡り演じたエリザベスI世とは違う視点での史実に基づいた描写にも注目したい。
 
 
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カトリックとして生まれたメアリー(シアーシャ・ローナン)がスコットランドに帰国した時、異母兄マリ伯(ジェームズ・マッカートル)の統治下でプロテスタント教徒が勢力を増していた。さらに、メアリー帰還の知らせは、イングランドの枢密院に大きな危機感を生み、エリザベス(マーゴット・ロビー)に結婚、懐妊のプレッシャーがかかる。メアリーの存在に脅威を覚えたエリザベスは、周囲の進言により寵臣タドリー(ジョー・アルウィン)との結婚をメアリーに提案するが、メアリーから「(自分の)王位継承権を認めるなら」との条件がつく始末。プロテスタントたちの反乱をなんとか抑えたメアリーは、ダーンリー卿(ジャック・ロウデン)と恋に落ち、再婚後、世継ぎを身籠もる。メアリーの結婚、出産の知らせを聞いたエリザベスは、心乱れながらも、愛するタドリーを前にある決断を下すのだった。
 
 
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メアリーがフランス時代から一緒で、いざという時にはメアリーの身代わりを果たす4人の侍女たちと、メアリーの秘書官で音楽家でもあったデビッド・リッチオ。王位を脅かされる日々の中、彼女たちが過ごす日常はまだ20代の若者の一面も垣間見せる。男色家だったデビッド・リッチオとバイセクシュアルだったダーンリー卿の交わりなど、歴史物語であまり語られなかった面も映し出され、新鮮だ。史実に基づく描写として、天然痘にかかったエリザベスをリアルに描写、デコボコになった肌を白塗りし、短く刈り上げた髪を隠すためにトレードマークとなったカツラを被り、自身のコンプレックスをせいいっぱい隠そうとする姿は、正当な王位継承権を持ち、男性との恋愛も世継ぎの出産も成し遂げてきた、自信たっぷりのメアリーとは対照的だ。
 
 
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そんな二人に共通しているのは、周りの男たちが自分の持つ王位継承権を狙っているという事実。実際、映画で登場する男たちは、権力を手にした途端手のひらを返し、横柄な振る舞いをみせる者ばかりで、メアリーが息子をエリザベスに託したのは、とても賢明な判断だった。実際に二人の女王が顔を合わせたという事実はないそうだが、数々の手紙を交わしており、映画では二人が唯一出会うシーンが登場する。国を背負い、権力を狙う汚い手から王位を守るための女王同士の駆け引き。お互いを気遣う気持ちもあれば、引けないプライドもある。時代や立場が違えば、唯一理解し合える友であったかもしれない。苦悩する姿が印象的だったマーゴット・ロビーが演じるエリザベスとは対照的に、太陽のように明るく、聡明で、男たちに流されず自分の人生を自分で切り開くメアリー。シアーシャ・ローナンの気品ある佇まいが、メアリーをより魅力的に感じさせてくれたことは言うまでもない。
(江口由美)
 
 
公式サイト⇒:http://www.2queens.jp/
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