原題 | REBEL IN THE RYE |
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制作年・国 | 2017年 アメリカ |
上映時間 | 1時間49分 |
監督 | ダニー・ストロング |
出演 | ニコラス・ホルト、ケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、ホープ・デイヴィス、ヴィクター・ガーバー、サラ・ポールソン他 |
公開日、上映劇場 | 2019年1月18日(金)~TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸、そのほか全国順次ロードショー |
~“伝説の作家”の波乱万丈な半生を描き、その実像に迫る~
昨年は『ライ麦畑で出会ったら』が公開され、今度は『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』と来た。なんでかなあと思えば、今年はJ・D・サリンジャー生誕100周年に当たるのだとか。両作共に好編であるが、私としては本作のほうがぴたっとはまった。書くことを生業としている者に、忘れかけている“書くことへの情熱”を呼び起こしてくれると共に、作家を取り巻く裏舞台を暴いて見せてくれるからだ。
サリンジャーは、『ライ麦畑でつかまえて』というビッグなベストセラー小説で一躍時の人となったが、34歳の時に大都会ニューヨークを離れ、ニューハンプシャー州のコーニッシュという田舎町に移り、隠遁生活と言ってもいい道を選ぶ。彼に何があったのか?本作は、膨大な資料と細心な調査の果てに出版されベストセラーとなったケネス・スラウェンスキー著『サリンジャー 生涯91年の真実』を下敷きに映画化されたもの。
映画は1939年のニューヨークで始まる。ジェリーことジェローム・デイヴィッド・サリンジャー(ニコラス・ホルト)は、家業の食品輸入業を継がせたいと望む父親に抗って、コロンビア大学の創作文芸コースに入る。学生たちを厳しく指導していたのは、文芸誌「ストーリー」の編集長でもあるウィット・バーネット教授(ケヴィン・スペイシー)だった。ジェリーは奮起して『若者たち』という短編を書き上げ、幾つもの出版社に持ち込むが、ことごとく却下され…。
若気の至りという面もあるが、自信満々で気の強いサリンジャー像に、生意気さと頑固さを感じる人も多いだろう。自分を育ててくれたバーネット教授に対する後年の態度は、ちょっとひどいんじゃないかという気もする。バーネット教授は、未だ磨かれていない作家志望青年ジェリーに才能の芽を見出し、他の学生が知ったら嫉妬するんじゃないかというほどに応援してくれたのだから。このバーネット教授の文章指南には、これから何かを書こうと思っている人への心構えと、実に的確なアドバイスが含まれているので、ぜひじっと耳を傾けてほしい。
太平洋戦争勃発により戦地体験をしたことが、ジェリーに大きなトラウマを与え、また、兵役に就いている間に、劇作家ユージン・オニールの娘でジェリーの恋人だったウーナ(ゾーイ・ドゥイッチ)が、なんとあのチャップリンと結婚したことも心を傷つけた。それでも、書く執念を保ち続けて成功を手にしたのは立派!ストーカーやら、高校生からのインタビュー事件など、91歳での他界まで彼を隠遁生活に向かわせた興味深いエピソードが登場し、成功者になったものの彼は本当に幸せだったろうかと考えてしまう。
キャストで注目したのが、ウーナ役のゾーイ・ドゥイッチ。出てきたとたんに、「あれ?誰かと似ている!」と思えば、リー・トンプソンの娘さんだそう。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年、ロバート・ゼメキス監督)で、マイケル・J・フォックス演じた主人公のお母さん役でキュートな存在感を示したのがリー・トンプソンで、髪型から表情からほとんど瓜二つなので、ぜひチェックしてほしい。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ https://www.rebelintherye-movie.com/
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