原題 | CUSTODY |
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制作年・国 | 2017年 フランス |
上映時間 | 93分 |
監督 | グザヴィエ・ルグラン |
出演 | レア・ドリュッケール、ドゥニ・メノーシェ、トマ・ジオリア、マティルド・オネヴ他 |
公開日、上映劇場 | 2019年1月25日(金)~新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、1月26日(土)~京都シネマ他全国順次公開 |
受賞歴 | 第74回ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞 |
~両親離婚で揺れる息子に、父が牙を剥く!〜
家族の問題ほど、解決が困難なものはない。とりわけ夫婦間のいざこざは、子どもたちの心を引き裂いてしまう。一方、いざこざが度を越し、狂気をはらむものとなった時、父と母の双方の間で板挟みになるのは子どもなのだ。『ジュリアン』はまさに、離婚訴訟中の両親の間で心を痛める11歳の息子、ジュリアンの目線で描かれるヒューマンドラマ。本来なら両親から愛情を受けるべき存在のジュリアンに待ち受ける運命は?最後まで目が離せないサスペンスとしても見応え十分だ。
離婚申請中のアントワーヌとミリアムには、娘ジョセフィーヌ、息子ジュリアンの二人の子どもがいた。アントワーヌのDV(ドメスティック・バイオレンス)に耐えかねた妻ミリアムは、離婚調停で単独親権を求めるが、アントワーヌはそれを認めようとしない。18歳のジョセフィーヌは親権の対象外のため、ジュリアンの親権が争点となる中、ミリアムは子ども達を連れ、身を寄せていた実家から、新しいアパートに引っ越し、心機一転を図ることを決めたのだったが・・・。
原題の“CUSTODY”は「親権」という意味。離婚調停で親権を争う二人を前に、ジュリアンが思うのは、父の暴力で傷ついている母の力になること。裁判所が共同親権を認める判決を下し、離婚後もジュリアンが父と過ごす時間を定期的に取らざるを得なくなる中、母を守るのは僕だとジュリアンが使命感に燃えるのも無理はない。過去を清算して新生活を願う母が、もう父と顔も合わせたくないのを痛いほど分かっているからだ。
父アントワーヌからすれば待ちかねたジュリアンとの面会は、ミリアムの現状や今の住まいを聞き出すことが大きな目的。そんな父の意図が分かるジュリアンは、どれだけ脅されても、母を守ろうと懸命に嘘をつく。息子に嘘をつかれたアントワーヌの行動がどんどん過剰になっていく様は、人間が追い詰められたらどのように変容してしまうのかを如実に示している。アントワーヌの常軌を逸した行動は、父と対峙するジュリアン、DV夫が再び自分の生活を脅かすのではないかと恐れるミリアムにとって、最悪の結末を予想させる壮絶なものだった。
グザヴィエ・ルグラン監督は、短編『すべてを失う前に』でミリアムを演じたレア・ドリュッケール、アントワーヌを演じたドゥニ・メノーシェを再起用し、ジュリアン役には本作が長編デビュー作となるトーマス・ジオリアを抜擢。DVという重いテーマを息子の視点で捉える一方、クライマックスは『シャイニング』から着想を得たというとおり、ホラーかと見まがうようなスリリングさで、観客の度肝を抜く。過剰な愛情や依存からくる束縛、暴力に支配された人に対して、家族だけでなく社会がどうすればいいのか。そんなことも考えさせられる社会派作品。心に傷を負った幼いジュリアンにも手厚いケアをと思わずにはいられない。
(江口由美)
公式サイト⇒:https://julien-movie.com/
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