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『メアリーの総て』

 
       

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作品データ
原題 Mary Shelley 
制作年・国 2017年 イギリス、ルクセンブルク、アメリカ
上映時間 2時間1分
監督 監督:ハイファ・アル=マンスール 脚本:エマ・ジェンセン、ハイファ・アル=マンスール
出演 エル・ファニング、ダグラス・ブース、ベル・パウリー、トム・スターリッジ、ベン・ハーディ
公開日、上映劇場 2018年12月15日(土)~シネスイッチ銀座、シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸、ほか全国ロードショー

 

あの“フランケンシュタイン”の生みの親は18歳の女性だった!
原作者メアリー・シェリーに出会える初めての映画。
哀しき怪物に込めた想いとは?

 

「フランケンシュタイン」を題材にした映画や演劇が今までどれほど作られて来ただろう。今なお多くのアーティストに影響を与え続けている、ゴシック小説の代表格である。フランケンシュタイン博士の野望により死体を縫い合わせて作られた怪物は、あまりにも惨たらしい形相ゆえに忌み嫌われ、恐れられた。異形であることの孤独と哀しみから狂暴になっていく怪物の物語を書いたのが、なんと18歳の女性だったとは、あまり知られていない。


mary-500-2.jpg「高慢と偏見」のジェーン・オースティンや「ジェーン・エア」のシャーロット・ブロンテと並ぶ19世紀イギリス文学史で最も重要な女性作家とされているメアリー・シェリーが、なぜその若さで「フランケンシュタイン」を生み出したのか。一体彼女に何があったのか。小説を世に出すまでのメアリー・シェリーを、若手女優実力No.1のエル・ファニング主演で映画化した初めての作品である。監督は、サウジアラビア初の女性監督、『少女は自転車にのって』(2012年)のハイファ・アル=マンスール監督。女性の人権意識の低いアラビア社会で女性の地位向上を静かにかつ力強く目指す意欲作に、世界が驚きと感動を持って注目した監督である。


mary-500-5.jpg19世紀初頭、フランス革命の余波や産業革命が起こりつつある不安定な世情に揺れるロンドン。政治思想家の父親とフェミニストの先駆者と言われている母親のもとに生まれたメアリー(エル・ファニング)だったが、母親はメアリー出産時に亡くなり、後妻には疎まれ、母が眠る墓地で読書と空想にふけっては小説家になる夢を抱いていた孤独な少女だった。「人真似ではなく、自分の言葉で書け」と父親に励まされていたメアリーは、スコットランドの父親の友人宅で新進気鋭の詩人パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と出会う。知的で美しいメアリーと若くてエネルギッシュなパーシーが惹かれ合うのに時間はかからなかった。


mary-500-1.jpgロンドンに戻ったメアリーを追ってきたパーシーに妻子がいることが発覚。それでも燃え上がる二人を止めることはできず、メアリー16歳で「自由な人生」を夢見て駆け落ちしてしまう。無理やりついて来た異母妹クレア(ベル・パウリー)との3人の生活は、パーシーの無計画さですぐに破綻。浪費癖や女癖の悪さに加え、親からの仕送りも途絶え夜逃げする始末。そのせいで最初の子供を亡くしたメアリーは、悲しみと罪悪感でひどく落ち込む。


mary-500-3.jpgそんな時、クレアが愛人と思っていた有名な詩人バイロン卿(トム・スターリッジ)の招きでスイスのレマン湖畔にあるディオダティ荘でひと夏を過ごすことになる。そこでフランケンシュタインの着想を得たメアリーは、バイロンの「君が書いた小説を読みたい」という言葉に励まされ18歳で執筆にとり掛かる。後に名作となる「吸血鬼」や「フランケンシュタイン」を生み出した「ディオダティ荘の怪奇談義」と言われるシーンはとても興味深い。


mary-500-4.jpgパーシーの妻が入水自殺したことでまたもや罪悪感に陥るが、パーシーと正式に結婚。小説は完成したものの、そのおぞましい内容から「女性の名前では売れない」と出版を断られ、仕方なく匿名で出版。異形の哀しみ、愛されない哀しみ、人間のエゴ、様々な人間の醜い想いや悲哀に満ちた普遍的要素を多くはらんだ物語は、たちまち人気本となる。メアリーは生涯5人の子供に恵まれるが、その内成人するまで育ったのは一人だけだったという。さらに、メアリー24歳の時に最愛の夫パーシーを水難事故で亡くしている。


メアリー34歳の時(1831年)に出版された第3版(改訂版)が、最終的に完成された小説となっている。彼女の人生は常に「死」と隣り合わせ。「死」に対する刹那さと無力感、哀しみが、「フランケンシュタイン」の物語をさらに深め膨らませていったのだろう。そこには“メアリーの総て”が込められているから――。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ https://gaga.ne.jp/maryshelley/

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