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『いろとりどりの親子』

 
       

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作品データ
原題 FAR FROM THE TREE  
制作年・国 2018年 アメリカ
上映時間 1時間33分
原作 アンドリュー・ソロモン「FAR FROM THE TREE:Parents,Children and the Search for Identity」
監督 レイチェル・ドレッツィン
出演 アンドリュー・ソロモン、ハワード・ソロモン、ジェイソン・キングスレー、ジャック・オルナット、デレク・リース、リア・スミス、ジョセフ・A・ストラモンド、ロイーニ・ヴィヴァオ 他
公開日、上映劇場 2018年12月1日(土)~シネ・リーブル梅田、MOVIX京都、12月8日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開

 

~“普通”とは違う子供でも、愛さずにはいられない親の深い愛~

 

この映画を観て、「この子が一番の安らぎを与えてくれる」と自閉症の息子を持つ友人の言葉を思い出した。宿舎住まいだったせいもあり、他人様に迷惑を掛けてはいけないと、意思疎通が困難で予測不能な行動をとる息子の制御に必死になっていた友人のその言葉に驚いた。ようやく我慢することを覚え、社会の規則にも慣れてきて、大人になった今では単純な仕事もできるようになった。そして、未だに幼い子供のような素直さの息子に和まされると言うのだ。世間から“普通”ではないと見られている息子だが、母親として精一杯の愛情を注いできた彼女だからこそ得られる“安らぎ”なのかもしれない。


irotoridori-500-1.jpg本作は、原作者のアンドリュー・ソロモンが、「両親は普通の子供を望んでいた。でも僕はゲイだった。家族に理解してもらえず、愛されていないと感じていた。他の家族も同じだろうか?」という思いから、10年に及ぶリサーチの結果をまとめた本、『FAR FROM THE TREE』の中から、6組の家族を紹介している。身体障害、発育障害、LGBTなど、さまざまな問題を抱える子供たちとその家族の苦闘はさぞかし悲惨なものかなと思いきや、“普通”ではないことを認められるようになった家族が“歓び”を感じられるようになる様子を捉えた、愛と感動のドキュメンタリーである。


irotoridori-500-4.jpg「普通とは違う子供を持った家族の話を書くことは、家族の本質を探ることだ」と語るアンドリュー・ソロモンのテーマに極めて深い理解を示したのがレイチェル・ドレッツィン監督。世界24か国で翻訳され、30もの映画化オファーの中から選ばれた彼女は製作も務めている。中には映画出演を戸惑う家族もいたようだが、「自分たちが経験した苦しい闇の部分を話すことで、他に同じような経験をしている人々の救いになれば」と撮影を受け入れてくれたという。


irotoridori-500-2.jpg低身長症の夫婦リアとジョセフは、 “普通”と変わらぬ社会生活を送り、初めての子供を授かり、家族にも大きな喜びを与える。二人とも底抜けに明るく機知に富んだ聡明なカップルだ。「この症状を「治してやる」だなんて、どこも治す必要なんてないわ!」と、低身長症治療に対し真っ向からNOを突き付けるリアは、実にアッパレ! また、「家族でも私の気持ちは分からないわ」と、母親の保護の元から自立を目指すロイーニ。「体は不自由でも、心は自由」というジョセフの言葉が響く。何をもって“普通”と言うのか、思わず考えさせられる。


「どんなに子供を愛しても間違いが起こることはある」と語るのはデレク・リース。16歳の息子が8歳の少年を殺してしまって殺人罪で服役中。引っ越しや転校を余儀なくされた他の息子と娘は「あんなに愛情いっぱいに育てられたのに…自分たちは子供を持ちたくない」と言う。「何がいけなかったのか?」と自分たちを責める日々の中、服役中の息子との対話が始まる。明確な答えは出ないかもしれないが、見捨てることなく、変わらぬ愛情を示すリース一家の勇気にひたすら敬服!


irotoridori-500-3.jpg自閉症のジャックは、パンチングライターというボードで自分の意志を伝えている13歳の少年。母親エイミーは、「私たちは難なく話せるけど、ジャックの苦労は計り知れない」とジャックへの理解を示すが、そこへ至るまでの苦労は想像を絶する。ただ癇癪を起して暴れるだけのジャックに、様々な治療法や教育法を試した両親は疲弊し切っていた。「私のせいでは?」と自分を責める母親。そんな彼らに奇跡のような出来事が起こる。藁にもすがる思いで受けた教育カウンセラーの下で、ジャックが初めて意志を伝えたのだ。それからというもの、学校でも家庭でもジャックの隠れた知能は発揮され、ジョークを飛ばすほど意思疎通ができるようになる。父親のボブが、「普通でなくていい」とジャックを優しく抱き寄せながらつぶやくシーンに、思わず感涙!


irotoridori-500-5.jpg44歳のダウン症のジェイソンは、『アナと雪の女王』のエルサに憧れるあまり、DVDを繰り返し見ては「レット・イット・ゴー」を歌い、エルサに会いにノルウェーへ行きたいと願っている。ラジオ局で社内郵便の配達の仕事をして、発達障害を抱える友人と3人で共同生活を送っている。「子供がどんな子であっても、親は自分の子供を愛さずにはいられない」と、ジェイソンの教育に全力を注いできた母親のエミリーだが、老い先短い我が身を思うと息子の将来が心配。でも、「僕たち最強の三銃士だ!」と仲良く暮らしているジェイソンを見ていると、幼いところはあるが、毎日を楽しんで生活している穏やかなリズムに、こちらまで心が和まされる。


決して彼らは保護されるだけの存在ではない。彼らの意志やパターンを理解することで、“普通”では得られない精神的に豊かなものが得られるような気がする。それに気付いた家族は、愛情の確証と共に大きな喜びを得たに違いない。そこには、まぎれもなく希望がある。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://longride.jp/irotoridori/

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