原題 | Sergio and Sergei |
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制作年・国 | 2017年 アメリカ、キューバ、スペイン合作 |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | エルネスト・ダラナス・セラーノ |
出演 | トマス・カオ、ヘクター・ノア、ロン・パールマン、ユリエット・クルス、マリオ・グエッラ |
公開日、上映劇場 | 2018年12月22日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、近日~シネ・リーブル神戸、12月1日(土)~ユナイテッド大津、ユナイテッド橿原、イオンシネマ和歌山 ほか全国順次公開 |
~CQCQ!無線は大気圏を越えて~
社会主義とか米ソ冷戦時代とか、遠い遠い世界の出来事だったけど、そこに生きる人たちの暮らしを丁寧に見せてくれると、俄然、真実味が生まれるから不思議だ。そして、遠い遠い世界の入り口はラジオよりちょっと大きめの機械だった。
時は、世紀末。旧ソ連の社会主義体制は崩壊し、新生ロシアが誕生した。ソ連の友好国であったキューバはそのあおりを受け、深刻な経済危機に見舞われる。国民は思想的にも財政的にも圧迫され、困窮をきわめていた。セルジオ(トマス・カオ)は大学時代にモスクワに留学。哲学を学び、帰国後は大学で教鞭を取る傍ら、閉塞された社会の下で、趣味のアマチュア無線を通じて世界の情勢を知ろうと努力していた。しかし、当局からはマークされ、無線は傍受、私生活も監視の憂き目にあう。
一方のセルゲイ(ヘクター・ノア)は旧ソ連時代の末期である1991年、華々しく宇宙へ飛び立ったが、その年の12月ソ連が崩壊する。宇宙滞在期間の最長記録更新という偉業を成し遂げたものの、と同時にそれは帰還無期限延長を意味するものだった。折しも隕石によって宇宙船の一部が破損してしまう。そんな、にっちもさっちもいかない状況の中、救世主が現れる!国籍も生活環境もちがう二人が無線によって知り合い、奇跡が生まれる。
エルネスト・ダラナス・セラーノ監督が、実在する宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフの宇宙滞在期間の最長記録が生まれた真実のいきさつを知り、この歴史的事実を大胆かつファンタジックにアレンジした。ちなみに2005年~06年に日本で放映されたカップヌードルのCMに登場する宇宙飛行士こそ彼である。かくして本作は世界の映画祭で様々な賞を受賞し、喝采を浴びた。
歴史にも宇宙工学にも疎いけど、こういう話ってとにかくワクワクする。セルゲイの冒険はもちろんのこと、セルジオの日常のなかでの冒険に心惹かれる。共産圏で資本主義の国と交信している=スパイというレッテルを貼られる環境の中、細々と無線を続けていたセルジオがあるとき偶然、宇宙船からの声を拾ったときの興奮はいかばかりか、それは想像するに余りある。また、無線の歴史の古さとスケールの大きさに今更ながらに驚く。世界的に見ればその歴史は19世紀にさかのぼる。パソコンも携帯電話もインターネットも影も形もない時代から地球規模で相互に交流できるツールがあったとは!
一般人もお金さえあれば宇宙へ行ける時代になった。TV番組で宇宙飛行士の若田さんにどう思うのかコメントを求めたら、素人が行くのは危険だよと仰るのかと思ったら、間口が広がるのは好いことと仰ったから感心した。天文学者の鳴沢真也さんも地球外知的生命探査に取り組んでおられる。そのうち宇宙人と交信できる日も来そうな気がしてくる。地球から月までは新幹線で50日かかるとか。まるで銀河鉄道999の世界。まだまだ解明されていない謎は、宇宙のそこかしこに転がっているはず。秋の夜長、つらつらと考え出したら眠れなくなりそう。そんなロマンも味わえて、知的探求心も沸く一本!
(山口 順子)
公式サイト⇒http://sergiosergei.com/
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