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『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』

 
       

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作品データ
原題 Sicario: Day of the Soldado
制作年・国 2018年 アメリカ 
上映時間 2時間2分  PG12
監督 ステファノ・ソッリマ
出演 ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノバン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ
公開日、上映劇場 2018年11月16日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー

 

前作との“境界”を感じさせない、まごうことなき続編。

 

まさかの続編だ。たしかにドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による前作は、アカデミー賞3部門にノミネートもされた一級のサスペンス・アクションだったが、ヴィルヌーヴ監督から日本ではほぼ無名のステファノ・ソッリマ監督に交代なのか…。どうなんだ?と訝しむ気持ちが無かったと言えば嘘になるけれど、プロフィールに目が留まる。アパレル業界を舞台にした衝撃のノンフィクション小説「死都ゴモラ」のTV版「ゴモラ」を手掛けた人物なのだった。小説を読んでいる者からすれば、あれをTVドラマ化し、評価されているというのだから俄然、興味がむくむく。そして観終わったいま、素晴らしいテイラー・シェリダンによる1つ(・・)()物語(・・)(脚本)に唸る。それほどに前作との“境界”をまったく感じさせない続編、あるいは後編(・・)でハリウッド・デビューを飾ることができたソッリマ監督は、強運の持ち主では?


メキシコ。夜に紛れた越境者“羊”たちを、アメリカの国境警備隊が追いつめる。必死に追っ手を交わそうと逃げ惑うひとりの男もついに観念し、両手を広げて祈りを唱え始める。そして次の瞬間…。


borderline2-500-1.jpgところ変わってアメリカ・ミズーリ州では、連続自爆テロ事件が発生していた。事態を重く見た国防長官は、CIA副長官シンシアの指揮下、百戦錬磨のCIA特別捜査官グレイヴァーに極秘任務を命じる。自爆テロの背後に、密入国ビジネスを財源とするメキシコの麻薬カルテルの存在を嗅ぎ取ったグレイヴァーは、旧知のアレハンドロを任務に引き入れる。コロンビア人で元検察官だったアレハンドロは、かつて麻薬王カルロス・レイエスに妻子を殺害されて復讐に燃える暗殺者となったのだ。


borderline2-500-2.jpg前作で、さすがの存在感を見せつけたベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンが、それぞれアレハンドロとグレイヴァー役で再登板。どんな手段を使っても、任務を遂行する男たちの心情を壮絶な死闘の中に浮かび上がらせたのが前作ならば、ひとりの人間として深い葛藤を強いられる今作は、より感情に訴えかけるものがあった。


borderline2-500-3.jpg麻薬王レイエスの娘、16歳のイサベルを誘拐し、レイエスと敵対する組織の犯行に見せかける。だが闇社会を内紛状態に陥れようというグレイヴァーの作戦は、あと1歩のところで暗転。しかもグレイヴァーは、彼自身が協力を要請したアレハンドロと、なんの罪もない少女イサベルの抹殺を命じられてしまう。


borderline2-500-4.jpg運命の皮肉から、敵の娘イサベルの庇護者として孤立無援の逃亡を図るアレハンドロ。過去の因縁と恩讐の鎖につながれた2人が、互いの“心の境界”を超えることを自らに許すまいとして孤独な魂を寄り添わせる刹那に胸が痛む。デル・トロの演技力に呼応するイサベラ・モナーもなかなかのもの。麻薬王の娘というティアラに翻弄されるイサベルの苦悩、宿命と戦い続ける少女の脆さまでも演じ切っている。


高く青い空の下、荒涼とした風景とごくありふれた都市の景観は地続きで、犯罪ビジネスの闇は紛れもなくメキシコの日常なのだという恐ろしさに、身が強張るのを感じた。


(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ https://border-line.jp/

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