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『旅猫リポート』

 
       

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作品データ
制作年・国 2018年 日本 
上映時間 1時間58分
原作 有川浩(「旅猫リポート」講談社文庫)
監督 監督:三木康一郎(『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』) 脚本:平松恵美子  音楽:コトリンゴ
出演 福士蒼汰、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼介、竹内結子、高畑充希(声の出演)他
公開日、上映劇場 2018年10月26日(金)~丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、あべのアポロシネマ、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランドほか全国ロードショー

 

かけがえのない時間を愛おしむ、
心優しき青年と猫のロードムービー

 

私は大の猫好きである。だから、テレビや映画のほんのちょっとした場面に猫が登場するだけで、つい、にた~と笑みが出てくる。もちろん、猫が主役級の映画には身を乗り出してしまう。住まいを追い出されたため、愛猫を連れて旅をするおじいちゃんを描いたアメリカ映画『ハリーとトント』(1974年、ポール・マザースキー監督)などは何回観たことか。


tabineko-500-1.jpgそして、猫が猫そのものの魅力を大発散しているこの映画は、『図書館戦争』や『阪急電車』など映画化された作品を数多く書いてきた有川浩の小説が原作。彼自身、「一生に一本しか書けない物語」と言ったそうだが、悔しいけれど泣いた。なぜ悔しくて、なぜ泣いたのかは後で述べる。


もともと野良猫として生きてきたが、交通事故でケガをしていたところを悟(福士蒼汰)に助けられたナナ。今はすっかり悟の飼い猫だ。ところが、ある事情により、悟とナナは一緒に暮らしてゆけなくなった。そこで、ナナのことを大事にしてくれそうな新しい飼い主を決めるため、一人と一匹の、笑いと涙の旅が始まる…。


tabineko-500-3.jpgナナの目線で進行する物語を映画化するにあたり、作り手が採った手法が、動物映画好きにはほぼ不評ともいえる「動物に人間の言葉をしゃべらせる」こと。本作では、オス猫のナナの声を高畑充希が担当している。なんでアカンのか? つまり、擬人化することで、物語の道筋がわかりやすく、でもある意味、ねじ曲げやすくもなるわけで、そうすると説明的になり、観る者の想像力をいとも簡単に奪ってしまう。じゃあ、どうするの?ってことになるが、そんなに演出過剰にならなくてもいいんじゃないかなあ。『ハリーとトント』でも、猫トントがじいさまのハリーを好きなんだというのはちゃんと伝わってきたもの。


tabineko-500-2.jpgと思いつつ、不覚にもぽろっと泣いてしまったのが何とも悔しい。なぜならこのナナって猫が、抱き心地の良さそうな、ふんわか度がまだらな毛並みで、とぼけた顔なのに、猫らしい気高さでツンツンしてて(それだけでも十二分に可愛いんだけど)、ああそれなのに、クライマックスともいえるシーンで、ある場所の扉を開けようと無謀な努力をするのである。ああその仕草は、やるせないほど切ない。肉球がある手(前足と呼ぶべきか)をこっちに向けて一所懸命に何度も何度も挑む…。このシーンは、猫好きの胸をぐさぐさ切り裂いて、忘れられなくなる。
 

tabineko-500-4.jpgそうして、いい人ばっかり出てくるというのも、本作の特徴の一つだ。ナナに攻撃を仕掛けてくる犬が出てくるぐらいで、意地悪な、いけ好かない人類は登場せず、み~んな悟とナナのことを大切に思ってくれる。悟も幸せ(たぶん)、ナナも幸せ(たぶん)。この図式を壊すと、物語自体が全く違うものになってしまうのだから。というわけで、猫好きにアピールする猫情&人情話として素直に楽しんだほうが幸せになれる一作。


(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://tabineko-movie.jp

ⓒ2018「旅猫リポート」製作委員会 ⓒ有川浩/講談社