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『スマホを落としただけなのに』 

 
       

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作品データ
制作年・国 2018年 日本 
上映時間 1時間58分
原作 志駕晃『スマホを落としただけなのに」(宝島社文庫)
監督 監督:中田秀夫  主題歌:ポルカドットスティングレイ「ヒミツ」(UNIVERSAL SIGMA)
出演 北川景子 千葉雄大 / バカリズム 要潤 高橋メアリージュン 酒井健太 筧美和子 / 原田泰造 成田凌/田中圭
公開日、上映劇場 2018年11月2日(金)~ 全国東宝系にてロードショー


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~あーっ怖っ! 命の次に大事なモン、それがスマホかも!?~

 

電車に乗ると、たいていの乗客が黙々とスマホをいじっています。中には一心不乱になってタップしている人も。ゲームに夢中になっているのでしょうかね。客観的に見ると、なんとも異様な光景に映りますが、気がつけば、自分もそのなかに埋没しています~(笑) 。ついこの間まで電話+メール機能しかなかった「携帯電話」がいつしか有り余るほどの機能を有する「スマホ」へと進化し、いまやこれがないと生活しにくくなってきています。


だから、紛失したらほんまに大変です。なにせ個人情報がわんさと満載されていますからね。FacebookやLINEで「スマホをなくした!」「海外でスマホを盗まれた!」という書き込みを時々、見かけます。自分やったらどないしょ? 犯罪に利用されるかもしれへん。もう、ビビりまくりますわ。


sumaho-500-1.jpg誰もが抱くスマホに内在する不安をサスペンス映画に仕立てたのが本作です。日常的にありうる話だけにグイグイ見入ってしまいました。原作者は志賀晃。無名の新人作家ですね。一度、活字で読みたくなりました。その小説を『リング』などのホラー映画で定評のある中田秀夫監督が実にスリリングに料理してくれました。


冒頭、サラリーマンの富田(田中圭)がタクシー内でスマホを置き忘れます。乗車中にスマホを触っていたり、書類に目を通していたりしていると、下車時に慌ててしまうので、結構、置き忘れるケースがあると先日、乗ったタクシーの運転手さんが言うてはりました。その後、富田のスマホに登録されている彼の恋人、麻美(北川景子)に「富田さんのスマホを拾いました」と匿名の電話が入り、彼女が代わりに取りに行く。なんと親切な人なんや。これで無事、スマホが戻り、一件落着。と思いきや、そこからドラマが始まります。ここで終わってしまえば、『スマホの置き忘れにご注意!』という10分間の短編啓発映画になってしまいますがな(笑)。


sumaho-500-5.jpg身に覚えのないクレジットカードの金額請求、SNSでつながった人物からのネットストーキング、(見られたくない)画像の流出、成りすまし……。これでもか、これでもかと畳みかけるように富田と麻美の2人に予期せぬことが起こってくるのです。


えらいこっちゃ!! これは焦る。「○○日までにお金を支払え」のメッセージを目にしたら、ぼくなら完全に卒倒します。すぐに警察へ届け出ればいいのに、どういうわけかそうせず、SNSで知り合ったネットセキュリティー会社の浦野(成田凌)という男に対処してもらいます。確かにIT系に強い人がおれば、頼ってしまいますよね。それですべてクリアすれば、警察沙汰にならなくて済むわけですから。ごく普通の庶民の心情をうまくくみ取っていました。


sumaho-500-2.jpgスマホに翻弄されるカップルの動向と並行して、人里離れた山林で若い女性の遺体がつぎつぎに発見されます。被害者はみなロングの黒髪。そこに同じように髪の毛の長いなんともけったいな男が密室でパソコンを操作するシーンが挿入されるのです。室内に流れる軽快なハワイアンのメロディーがよりいっそう不気味さをかもし出します。


結構、早い段階で、この人物が連続殺人の犯人であることを匂わせます。もう少し間延びさせてもよかったと思うのですが……。じわじわと猟奇殺人の様相を帯びてくるところが巧い。これぞ中田監督の演出の妙ですね。


sumaho-500-4.jpg麻美も長い黒髪。当然、いつ、どんな形で被害に遭うのかとハラハラ、ドキドキさせられます。さらにプレイボーイの元カレ(要潤)との再会、そこから浮き彫りにされてくる彼女の忌まわしい過去が絡み合い、なかなか重層的なドラマ構成になっていました。大好きな富田からプロポーズされたのに、素直に「イエス」と言えない麻美。いったいどんな素顔があるのか――?


すべてITに関わる機能で物語が流れていきます。周囲からはスマホを使いこなしているように見せかけているけれど、実体はまだまだアナログ人間のぼくからすれば、とんでもない異次元の世界に映ってしまいます。ほんま、すごい社会になってきてますね。


sumaho-500-6.jpg連続殺人事件とあって、警察が捜査に乗り出します。そのキーパーソンがIT企業から刑事に転身した若い加賀谷(千葉雄大)です。典型的な今風の若者。この分野のあらゆることに精通している「ITオタク」で、ぼくから見れば、宇宙人ですわ。現在、どの警察でもサイバー犯罪対策課を設けており、加賀屋のようにIT関連企業からの引き抜きもあると某警察官から聞いたことがあります。


自分の知らないところで、自分が透視され、犯罪に巻き込まれていく。ほんまに怖いです。まさかこんなことはあるはずがないと思いつつ、冷静に考えれば、現実的に起こりうることです。それでは、どうすればいいのか。何よりもスマホの置き忘れを防ぐことが一番。その方策として、スマホと一定以上離れると、「ブー」と警報音が鳴るようにすればいいと思うのですが、いかがでしょうか。


sumaho-500-7.jpg最後に涙のリクエスト(古いなぁ)。「スマホを落としただけなのに、地球が絶滅する!」、あるいは、「スマホを落としただけなのに、餃子20人前を食うはめに!」。こんな内容のSF映画かコメディーを作ってほしいです~(^_-)-☆


武部 好伸(エッセイスト)

公式サイト⇒ http://sumaho-otoshita.jp/

(C)2018映画「スマホを落としただけなのに」製作委員会