制作年・国 | 2018年 日本 |
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上映時間 | 1時間40分 |
原作 | 森下典子著「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」(新潮文庫刊) |
監督 | ・脚本:大森立嗣 |
出演 | 黒木華、樹木希林、多部未華子、鶴田真由、鶴見辰吾他 |
公開日、上映劇場 | 2018年10月13日(土)~全国ロードショー(10月6〜8日先行上映) |
~茶道が教えてくれた四季を感じる心、そして人生~
かつては花嫁修行として女性の習い事で人気のあった茶道(お茶)。バブル絶頂期入社の私も、会社のお茶を習っている先輩から、お稽古の様子やお茶会の主人を務めることになり、いろいろな手配が大変という話を聞いたことはある。ただ、私自身はどうも肩苦しいことは苦手で、新しそうなことに目がいってしまっていた。本作の主人公典子がハタチの頃に「私、フラメンコとか、イタリア語がいい〜」と言っているのを聞いて、まさに昔の私だと笑いがこみ上げたのだ。結局私は、そのままフラメンコを習っていたのだが、典子のようにお茶を習っていたら、もう少し違う人生を歩んでいたかもしれない。たかが習い事と侮るなかれ。続ければ、その真理が見えてくる。森下典子の「日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」を、大森立嗣監督(『セトウツミ』『光』)が四季折々の風情を盛り込みながら映画化。9月に亡くなった樹木希林の凛とした先生役は、必見だ。
どこにでもいる普通の女子大生だった典子(黒木華)がお茶と共に過ごした年月を、24年に渡って描く等身大の女子物語。近所にいるただ者ではないと噂の茶道教室の先生・武田のおばさん(樹木希林)の元を、従姉の美智子(多部未華子)と訪れたところから、最初は少し敷居が高いように思える茶道に触れる日々が始まる。
「お茶はまず形。形を整えて、後から心を入れる」と先生が二人に説く通り、とにかく最初は覚えることが多い。お茶に限らず、オリジナリティーを出す前に、まずは基本の型を覚えるというのは全てに共通していることだが、典子たちの悪戦苦闘ぶりを見ていると、先生ではなくても「それ、違う!」と突っ込みたくなる。そんな典子たちのお茶と向き合う時間が流れるのを、掛け軸や、部屋に飾られる季節の花、お茶菓子で感じられるのがお茶の映画ならではの贅沢さだ。茶道でお茶を味わうことは、お茶を通して自分や、お客様と向き合うことでもある。細部まで心を尽くし四季を取り入れたおもてなし、優雅な作法、集中力を高められる静かな時間。世の中がどんどん慌ただしくなる中、この静けさがいかに貴重かを実感する。仕事や恋人と、私生活で様々な壁にぶち当たる典子にとって、お茶の時間、先生に会えるひと時は、どれだけ彼女を支えていたことか。海辺で感情をぶつけることもあれば、次第に後輩に指導するまでの成長ぶりを見せる典子を、黒木華が自然体で演じている。
そして、樹木希林さんを茶道の武田先生にキャスティングした大森監督に心から感謝したい。ここ数年、主役級の役を演じることが多かった樹木さんだが、個性的で、老いを強調するような役が多かったように思う。だがこの武田先生はシャンとした和服姿で、キリリとした中に、神経質になってしまう生徒を温かく受け入れる懐の深さをみせる。美しい佇まいと所作の樹木さんをスクリーンで見ることができるのだ。しかも、この武田先生は物語の後半、典子らお茶の生徒たちから米寿のお祝いをされるシーンも登場する。いつまでもお茶の道を極め続ける、憧れの先生は変わらずそこにいた。すでに樹木さんの様々な生前エピソードが紹介されているが、本作の武田先生も人生のイロハをお茶にのせて教えてくれる。ずっとそばに置いておきたいような、愛おしい作品だ。
(江口由美)
(C) 2018「日日是好日」製作委員会
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<配布開始日>
10/13(土)より
<配布劇場>
テアトル梅田
シネ・リーブル梅田
シネ・リーブル神戸
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