制作年・国 | 2018年 日本 |
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上映時間 | 1時間52分 |
原作 | 葉室麟「散り椿」角川文庫 |
監督 | ・撮影:木村大作 脚本:小泉堯史 |
出演 | 岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子、緒形直人、新井浩文、柳楽優弥、芳根京子、駿河太郎、渡辺大、石橋蓮司、富司純子、奥田瑛二 |
公開日、上映劇場 | 2018年9月28日(金)~全国東宝系にてロードショー |
清廉な生き様を映す散り椿
亡き妻との約束を果たすための決死の帰郷
これほどまでに格調高く気品に満ちた時代劇を見たのは久しぶりだ。先ごろマンガのような形崩れの“時代劇”を見て「もうアカン、時代劇は死んだ」と観念したものだが、どっこい、名カメラマンとして日本映画の質を支えてきた木村大作オヤジがいた。木村さんは初監督作『劔岳 点の記』(09年)で第33回日本アカデミー賞最優秀監督賞に輝いた。ファンならご存知、あの黒澤組の撮影助手としてキャリアをスタートさせた木村さんの映画人生60年目の節目に「時代劇」が選ばれたのも偶然ではないだろう。
全編ロケーションによる美しい自然と四季がまことに格調高く、見る者に迫る。「歴史を刻む美しい時代劇」のキャッチがぴったりだ。岡田准一の迫力に満ちた殺陣といい、上司の不正を身を持って糾弾する清廉な生き様といい、不正が横行する今の時代を一刀両断、無言の抗議にも通じるようだ。
原作は葉室麟。朴訥で不器用ながらひたすら清廉に、凛として生きようとする侍たち。ただ愛のために命をかけて思いを貫こうとする彼らの生きざまに心奪われる。椿は咲き誇っている時、ポトリと花びらを落として散る。それが武士の生き様のように潔いとされるが、はかないものでもある。
かつて、藩の不正を訴え出ながら認められず、故郷・扇野藩を出た平山道場“四天王”の一人、瓜生新兵衛(岡田)は、連れ添い続けた妻・篠(麻生久美子)が病に倒れた折り、彼女から最期の願いを託される。
「釆女様(西島秀俊)を助けていただきたいのです」と。釆女とは同じ道場の四天王の一人で、新兵衛には良き友だったが、二人には新兵衛の離郷に関わる因縁があった。釆女の父が不正に関わっており暗殺された上に、篠の兄はその騒動の責めを一人で背負って切腹させられていた。
篠の願いと藩の不正事件の真相を突き止めるため故郷に戻った新兵衛に「今ごろなぜ?」と周囲の目は冷ややかだった。だが、篠の妹・里美(黒木華)とその弟・藤呉(池松壮亮)も新兵衛の意図に戸惑いながらも、彼の真摯な生き様に牽かれていく。
椿が咲き誇る春、確証を得た新兵衛は釆女とともに、過去の不正事件の真相と対峙する。妻との約束を果たすため、抜き身を引っ下げて多数の侍相手に斬り込んでいく新兵衛、その立ち姿に惚れ込んでしまう。やがて、新兵衛は愛に溢れた妻が秘めていた本当の想いを知る。だが、その裏では藩の上層部の大きな力が新兵衛に迫っていた……。
端正で美しい画面を引き締めるのが岡田准一の“目にも止まらぬ早業”だ。誰もが認め、恐れる「凄腕」は追い詰められた時にだけ、鮮やかに一閃し状況を斬り開く。そのスピードと迫力、もの凄さはハンパじゃない。時代劇俳優・岡田准一、渾身の殺陣は、一時代を築いたレジェンド、座頭市(勝新太郎)にも負けないかもしれない、と思わせる。また一人“平成最後のレジェンド”が誕生した。
(安永 五郎)
公式サイト⇒ http://chiritsubaki.jp/
(C)2018「散り椿」製作委員会