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『1987、ある闘いの真実』

 
       

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作品データ
原題 1987
制作年・国 2017年 韓国 
上映時間 2時間9分
監督 チャン・ジュナン
出演 キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソル・ギョング、ユ・へジン、キム・テリ、パク・ヒソン、カン・ドンウォン、他
公開日、上映劇場 2018年9月8日(土)~シネマート新宿、シネマート心斎橋、京都シネマ、10月27日(土)〜元町映画館他全国順次公開
 

~国をあげての隠蔽を許さない!

民主化を求めて100万人が立ち上がった1987年の真実〜

 
ソン・ガンホ主演の大ヒット作『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、1980年5月に起こった光州事件で、多数の死傷者が出ている様子を海外に命懸けで発信したドイツ人記者と、彼を現場に送り届けたタクシードライバーの実話を元にした物語だった。
その光州事件後に大統領に就任したチョン・ドゥファンが強圧的な軍事政権を率い、取締と言う名の連行、拷問が日常的に行われた結果、1987年にソウル大学の学生だったパク・ジョンチョルが連行後死亡する事件が起こった。この「パク・ジョンチョル拷問死事件」の真相を暴こうとする人々と、南営洞警察で反共勢力撲殺を自らの使命とし、拷問死の事実隠蔽と任務に邁進するパク所長率いる刑事たちの攻防、そして大きなうねりとなっていく市民運動と政府軍の攻防を描いたのが、『1987、ある闘いの真実』である。
 
 
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1987年1月、北分子を目の敵にする南営洞警察のパク所長(キム・ユンソク)指揮下の取り調べは拷問が日常化していた。ソウル大学の学生パク・ジョンチョルが過激な取り調べの途中で死亡してしまう。警察は真実を隠蔽するため即日で火葬を申請するが、不審に思ったチェ検事(ハ・ジョンウ)は法律の通り、解剖することを命じる。警察側の隠蔽工作に屈することなく、極秘に情報提供を受けた東亜日報記者(ユン・サンサム)が死亡した大学生が警察の暴行による死亡であることを報道。パク所長は部下に罪をかぶせ、事態の早期収拾を図ろうとするのだったが・・・。
 
 
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北朝鮮時代に家族を殺され、反共活動に異様な執念を見せるパク所長。事実の隠蔽を図るため報道機関に圧力をかけ、情報を聞き出すためには家族の処分もチラつかせる。刑務所の看守を務めるハン・ビョンヨン(ユ・へジン)は民主化勢力に伝書鳩として協力している男だが、彼が娘と思って育てている姪が『お嬢さん』で注目を浴びたキム・テリが革命なんて興味のない普通の女子大生として登場し、ハンに頼まれた伝言入りの雑誌を指名手配されている民主化リーダーに手渡す役目も果たしている。デモに巻き込まれた時に救ってくれた運命の人(カン・ドンウォン)と大学キャンパスで再開するが、彼こそが後の大規模デモで最前線に立ち非業の死を遂げる実在の人物イ・ハニョルだ。
 
 
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志のある若者をはじめ、多くの死傷者を出しながら、ソウル五輪開催の前年にようやく達成した民主化。30年の時を経た今だからこそ、ディテールまで詳細に甦らせることが精神的にもできる。それぐらい、韓国の人々の中で大きな痛みを伴う出来事だったのだろう。『ファイ 悪魔に育てられた少年』のチャン・ジュナン監督が、韓国の名俳優を配して30年前の真相に迫った秀作ドラマ。劇中で登場する大学生たちは、まさに私と同世代。バブルへとまっしぐらだった日本の隣国で、学生や市民が命がけで軍事政権に立ち向かっている姿を、時を経てこの作品で知ることができたのは意義深いし、政府から報道規制が入る様子は今の日本そのものにも映る。革命には大きな犠牲を伴うこともさらけ出した、圧政にNOを突きつけた市民たちと、その陰で犠牲になった人たちの尊い記録だ。
(江口由美)
 
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公式サイト⇒:http://1987arutatakai-movie.com/
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