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『スターリンの葬送狂想曲』

 
       

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作品データ
原題 THE DEATH OF STALIN
制作年・国 2017年 イギリス 
上映時間 1時間47分
原作 ファビアン・ニョリ作、ティエル・ロハン画『スターリンの葬送狂想曲』発売元:小学館集英社プロダクション
監督 アーマンド・イアヌッチ
出演 スティーヴ・ブシェミ、ジェフリー・タンバー、オルガ・キュリレンコ、マイケル・ペイリン、サイモン・ラッセル・ビール、ポール・ホワイトハウス、ジェイソン・アイザックス、アンドレア・ライズブロー、ルパート・フレンド、アドリアン・マクローリン、ダーモット・クロウリー、ポール・チャヒディ他
公開日、上映劇場 2018年8月3日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー
 

~独裁者の突然死で本音が露呈!他人事とは思えない“世紀のお葬式”コメディー~

 
ここまでやっていいんですか?と思わず唸ってしまうぐらい、ヒトラーと並ぶ独裁者にして、粛清という名の虐殺を断行し続けたスターリンを題材に、その急死から国葬までのわずかな日々をブラックユーモアで描き切る驚きの映画が登場した。スターリンの側近だった政治家や軍部の長も実名で続々登場。スターリンの死で自分の時代が来たと言わんばかりに這い上がろうとする側近たちの蹴落とし合戦には、他人事とは思えない棘が潜んでいる。スターリン国葬の舞台裏コメディーから、スターリンの生前の粛清ぶり、そして権力者に抑圧されてきた市民の窮状が露わになる。ロシアで上映禁止になるのも納得の必見作だ。
 
 
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1953年モスクワ。明け方まで続いた側近たちとの宴から自室に戻ったスターリンは、無理に録音させたコンサートのレコードに入っていた「その死を祈り、神の赦しを願う暴君よ」と書かれた手紙を読み、倒れ込んでしまう。20年にも渡ってソビエトを牛耳ってきた独裁者スターリンの部屋の前で待機している護衛は動きがないことを不審に思いながらも、「開けたら殺される」とその場の業務を遂行。お茶を運んできたメイドによりスターリンが意識不明で発見されたが、時すでに遅し。後継者の名を告げることなく、息を引き取ってしまう。スターリンの突然死により空席となった最高権力者の座には、誰が座るのか!?
 
 
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秘密警察の警備隊長ベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)は、次期書記長にスターリンの腹心だったマレンコフ(ジェフリー・タンバー)を推す代わりに、自分を副議長に推薦してもらい、有頂天状態だ。スターリンの粛清リストを破棄し、囚人も解放。自分のかつての行いを棚にあげて、「国のコルセットも緩めたな」と意味深な言葉を残すのだ。そんなベリヤに対する作戦を立てたのは、中央委員会第一書記のフルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)。ソビエト軍最高司令官ジューコフ(ジェイソン・アイザックス)と結託し、葬儀委員長を務める国葬の日にある陰謀を仕掛ける。スターリンの子どもらも体良く追い出し、権力争いに邁進する元側近たちの駆け引きを、ブラックユーモアたっぷりに見せる。深刻になりすぎず、事実を見据えながらの描写はバランスを取るのが難しい。だが、イギリスのアーマンド・イアヌッチ監督は、冷徹な彼らの愚かさ、人間臭さを巧みに描き、共感はしないが笑いが込み上げるという絶妙の印象を与えているのだ。
 
 
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イエスマンだらけの側近たちとは違い、唯一スターリンに異を唱える存在として、彼が録音を熱望したコンサートの女性ピアニストが描かれているのは、とても興味深い。スターリンのわがままによる撮り直しに最後まで難色を示し、横暴な権力者にノーを突きつける。彼女の「ノー」があることで、ただの政界を舞台にしたブラックコメディーではなく、市民のプライドを見た気がする。スティーヴ・ブシェミをはじめとする役者たちの名演、怪演も見所のスターリン時代終焉を告げる“世紀のお葬式”の裏側は、どこか他人事とは思えない問題を孕み、笑った後、ヒヤリとする。とにかく刺激的であることは、保証したい。
(江口由美)
 
公式サイト⇒http://gaga.ne.jp/stalin/
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