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『未来のミライ』

 
       

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作品データ
原題 MIRAI  
制作年・国 2018年 日本
上映時間 1時間38分
監督 監督・脚本・原作:細田守  オープニングテーマ・エンディングテーマ:山下達郎
出演 (声の出演):上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司/ 福山雅治
公開日、上映劇場 2018年7月20日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ西宮OS、TOHOシネマズ二条 ほか全国一斉ロードショー

 

ファンタジーの力を借りて、
愛する喜びを見つける少年の物語

 

父、母、犬のゆっこと暮らす4歳の「くんちゃん」の家に、生まれたばかりの妹がやってくる。それまでくんちゃんを中心に回っていた生活は一変する。すねても泣いても、母はかまってくれない。新しい家族の世界を受け入れられないくんちゃんが発した言葉は「好きくない!」。くんちゃんのショックの大きさがあふれる。妹の頬をつねったりひっぱって母に叱られ、つい電車の模型で妹の頭を叩いて泣かせてしまう…。


mirai-500-1.jpg映画は、俯瞰でとらえられた住宅地の中の一軒家から始まる。建築家の父が設計した家は階段状で、中2階のようなところにある中庭が、時空を超える場所となる。くんちゃんは、そこで未来からやってきた、学生姿の妹ミライちゃんに出会い、家族の誰かを思わせる謎の人々との出会いを重ねていく…。家族とは、父母がいて、祖父母がいて、曽祖父母がいて、連なった生の営みの先に、くんちゃんの「今」があり、未来へとつながっている。このことを俯瞰ショットで一気に見せるシーンのスペクタクルなこと。


mirai-500-2.jpgこれは愛をめぐる物語でもある。「愛」は同じ形でとどまることはない。常に変容していく。くんちゃんの両親も出会って、恋に落ち、結婚して、くんちゃんが生まれ、二人目の出産をきっかけに、仕事中心だった父は母と役割交替を決心する。夫婦の愛もまたそのときどきの状況でありようを変えていく。強い愛で結ばれたはずの両親もたえず努力し、お互いを思いやることで、家族のかたちが保たれていることを映画は教えてくれる。くんちゃんの両親の会話がリアルで微笑ましい。


mirai-500-3.jpg『時をかける少女』、『おおかみこどもの雨と雪』など、躍動感あふれる映像の中で、登場人物の率直な思いを丁寧に描き、多くの観客の心をつかんできた細田守監督。くんちゃんが迷い込む東京駅のシーンは、動画の電光掲示板が光り、SFの世界のようで、圧巻だ。


mirai-500-4.jpg妹は、両親の愛を奪う存在ではなく、幼くして守るべき命であり、両親の愛を分かち合い一緒に生きていく家族だとわかった時、くんちゃんの顔に本当の笑顔が戻る。相手に愛されることを待ち望むのではなく、愛することを学んだとき、人は大きく成長する。くんちゃんの心の旅は、私たちの誰もがかつて歩んだことのある道なのだ。


mirai-500-5.jpg(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://mirai-no-mirai.jp/

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