原題 | BUENA VISTA SOCIAL CLUB: ADIOS |
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制作年・国 | 2017年 イギリス |
上映時間 | 1時間50分 |
監督 | ルーシー・ウォーカー 製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース |
出演 | オマーラ・ポルトゥオンド、マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール、バルバリート・トーレス、エリアデス・オチョア、イブライム・フェレール、オルランド・“カチャイート”・ロペス、へスース・“アグアヘ”・ラモス、パピ・オビエド、ペドロ・パブロ、アルベルト・ラ・ノーチェ、ロランド・ルナ、カルロス・カルンガ、イダニア・バルデスフィリベルト・サンチェス、ルイス・アレマニー、アンドレス・コアヨ、グアヒリート・ミラバール |
公開日、上映劇場 | 2018年7月20日(金)~TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー |
~キューバの歴史、音楽史を紐解き、新しい世代へつなぐ壮大な音楽ドキュメンタリー〜
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、元々20世紀前半、キューバにおいて差別が厳しい時代に、当時の貧しい黒人たちが集い、彼らの支えになっていた大事なホールの名前であったということを、今回初めて知った。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(97)は、アメリカのギタリスト、ライ・クーダーがキューバの名ミュージシャンたちと組んで作ったアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の大ヒットを受けて、彼らの素顔とワールドツアーの模様に密着したドキュメンタリーだった。私自身もこの映画のファンなので、続編ができると知りとても喜んだと同時に、あれから20年も経っていることが信じられない。前作では、すでに高齢のバンドメンバーが、非常に味わい深い演奏と逸話を披露し、それが作品の大きな魅力だったが、残念ながら今回、全員のメンバーがアディオスツアーに参加できた訳ではない。あの世に旅立ってしまったメンバーも多いのだ。日の目を見ることのなかったキューバのミュージシャンたちに光を当てた映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の続編に課せられたのは、より深く彼らのルーツ、しいてはキューバの社会変化における音楽の変化を伝えることであり、初代メンバーが世界に広げたキューバ音楽を新しい世代へつなぐことなのだろう。
19世紀末に誕生したキューバ伝統音楽の源、ソン。その後、主要バンドメンバーたちが生まれ、音楽にたどり着くまでのヒストリーも語られる。生きるためにギター片手に幼い頃から演奏をしたり、タバコ工場でハバナ行きのお金を貯めたりしながら、50年代のキューバ音楽黄金期に彼らも花開いていく。中でも紅一点のオマーラ・ポルトゥオンドは、若い頃、姉らとグループで活動していたが、ソロに転身し、80代後半の今でもブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのメインボーカルとして現役で活動している。クライマックスのアディオス(さよなら)ライブでは、次々と仲間が旅立っていく中、赤いドレスをまとい、軽やかなステップでキューバ音楽のリズムに乗り、歌う。その姿が誰よりも眩しくて、憧れの眼差しで見つめてしまうのだ。
時代を感じさせるエピソードとして、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのメンバーがオバマ大統領(2015年当時)に招かれ、ホワイトハウスで演奏をするシーンも収められている。キューバとアメリカが国交を回復、そしてキューバのミュージシャンが50年以上ぶりにホワイトハウスで生演奏するという世紀の瞬間は非常に和やかなムードに包まれ、オバマ大統領自身が「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のCDを買っていたという裏話も披露。大統領が代わり、時代がまた元に戻らないことを祈るばかりだが、メンバーたちの人生晩年に訪れた記念すべき出来事を目撃することができるのも、本作の見所だろう。今回は新しい若手メンバーや、メンバーの孫などが加わり、アディオスが次の始まりにつながることを予感させる。世界にファンを広げたキューバ音楽を、継承し、進化される若い力に期待しながら、これまでキューバ音楽に人生を捧げ、人々に愛される音楽を奏でてきた今は亡きメンバーたちに心からの感謝を伝えたい。
(江口由美)
公式サイト⇒:http://gaga.ne.jp/buenavista-adios/
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