原題 | Jurassic World: Fallen Kingdom |
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制作年・国 | 2018年 アメリカ |
上映時間 | 2時間08分 |
監督 | J・A・バヨナ(『怪物はささやく』『インポッシブル』『永遠のこどもたち』) |
出演 | クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、B・D・ウォン、ジェームズ・クロムウェル、テッド・レビン |
公開日、上映劇場 | 2018年7月13日(金)~全国ロードショー |
~驚愕のエンディング! 人類はどないなんねん?~
映画が始まるや、ぼくはメモ帳に「正」の字をつけていました。恐竜が何頭出てくるのか、それをすごく知りたかったからです。海中シーンの冒頭から早くも2頭が出現し、30分後にはそれこそ収拾がつかなくなるほどわんさと登場しました。そしてラストは密集状態に! どれだけ恐竜を出したら気が済むねん! 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はまさにそんな感じでした。
世界に鮮烈な衝撃を与えた『ジュラシック・パーク』(1993年)から早、25年が経ちました。四半世紀です。その間、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)、『ジュラシック・パークスⅢ』(2001年)、『ジュラシック・ワールド』(2015年)とシリーズ化され、本作が5作目と相成ります。
どんな映画であれ、シリーズ化されると、これまでとは異なったコンテンツが必要だし、パワーアップも求められます。1962年以来、24作も世に放たれた『007ジェームズ・ボンド』シリーズは毎回、いろいろ知恵が絞られており、観ていて大変やなぁと思っています。
『ジュラシック・パーク』シリーズはスティーヴン・スピルバーグ監督が手がけた第1作目があまりにも出来が良く、しかもTレックスの存在感が半端ない~でした。なので、あとの作品がどうも霞んでしまっています。古代の琥珀から恐竜を蘇らせるという発想がたまらなく魅力的で、結局、人間の強欲さから生じる「科学の暴走」によってエライ目に遭うというテーマもしごく納得できます。
恐竜は人間にとって絶対的に強い存在です。遭遇すれば、間違いなく襲われて食われてしまう恐怖のシンボルです。ほんま、難儀な生き物ですわ。こんなやっかいなモンを自然の摂理に逆らって再生させた人間はやっぱりアホです。シリーズ2作目以降は、言わばこの主題をアレンジしただけです。どの作品でも人間は懲りずに強欲さを現し、エライ目に遭っています。
本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』もその路線とはいえ、エライ目の度合いが段違いに異なっていました。物語は、恐竜が生息している絶海の島で火山が大噴火を起こし、そこから主な恐竜を救出するというものです。この島は前作『ジュラシック・ワールド』で恐竜によって滅ぼされたテーマパーク「ジュラシック・ワールド」のあったところで、恐竜たちの楽園になっていました。
動物愛護の観点から彼らの救出作戦が行われるのですが、その裏で恐るべき陰謀が企てられています。その結果、取り返しのつかないおぞましいエンディングが用意されているのです。これまでの4作は一応、作品ごとに何となく物語が収束していました。本作ではしかし、とんでもない世界が待ち受けているのです。考えるだけでもゾッとします。絶対にイヤや! その意味で異質な作品と言えるでしょう。
映画の中でおびただしい数の恐竜が登場しました。その中で2頭の「キー・パーソン」がいます。あっ、間違えました! 「キー・ダイナソー(恐竜)」です。
1頭はブルーと名づけられたヴェロキラプトル。前作で恐竜テーマパークの飼育員オーウェン(クリス・プラット)に調教された、ずば抜けた頭脳の持ち主です。「人類の次に優秀な生き物」というセリフが出ていました。つまりイルカやワンコよりも賢いんです。それに感情もあります。爬虫類なのに(別にバカにしているわけではありません)、そんなアホなことあるかいと思ってしまいますが、まぁ、そこはフィクション。目を瞑りましょう(笑)。
このブルーが「正義の味方」というか、ピンチになると、オーウェンらをサポートします。何だか救世主、いやスーパーマンみたいだったのがおかしかった。さらに準主役とあって、絶対に死にません。続編ではブルーが主役級に躍り出ているかもしれません。でも、限りなく人間に近い恐竜であるがゆえ、きっと悩むでしょうね。
もう1頭が恐竜の凶暴さを凝縮させて作り出したインドラプトル。Tレックス以上に怖いし、強い! 動きも俊敏で、ずる賢い。まさにモンスター! だから武器になり、お金になります。恐竜を商品化するところが何とも浅ましい。インドラプトルは人間の強欲さの塊です。
後半のハイライトの1つが恐竜たちのオークション。招待されたのは武器商人、軍需産業や医療・製薬企業の経営者たち。なぜ医学の分野が絡むのかというと、恐竜のDNAから新しい治療薬が開発されるかもしれないからです。ファッション・ショーもどきに檻の中に入った恐竜たちが順々に登場してくるシーンには思わず笑ってしまった。シャレで恐竜にけばけばしい服を着させたら面白かったのに……(笑)。もちろんインドラプトルには破格の値がつきました。
実は極め付けの「キー・パーソン」がいます。大富豪の孫娘メイジー。オーディションで2500人の中から選ばれたすごく可愛い子です。クローン技術で生み出された恐竜たちにシンパシーを感じるあどけないメイジー。なぜそう感じるのか? 映画を観れば納得できますよ。彼女の決断が驚くべき結末へと導きます。ボタンを押すだけで地球の、人類の運命が激変する……。核のボタンも同じだと思います。
早くも続編を観たくなりました。でもここまできたら、もはやゴジラを引っ張り出さないと収拾がつかなくなるかもしれません。恐竜VSゴジラ。このアイデアを製作総指揮のスピルバーグさんに売り込みましょうかね(笑)。
武部 好伸(エッセイスト)
公式サイト⇒ http://www.jurassicworld.jp/
(C)Universal Pictures