原題 | Battle of the Sexes |
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制作年・国 | 2 017年 アメリカ |
上映時間 | 2時間2分 |
監督 | ヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン |
出演 | エマ・ストーン、スティーブ・カレル、アンドレア・ライズブロー、サラ・シルヴァーマン、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シュー、オースティン・ストウェル、ナタリー・モラレス他 |
公開日、上映劇場 | 2018年7月6日(金)~TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
ラケットを武器に、
NO!を突きつけた伝説のテニスプレイヤーに拍手!
最近、日本の女子テニスプレイヤーの活躍がめざましいが、テニスでもって「時代を変えた」といわれたのが、本作の主人公であるビリー・ジーン・キング(昔、日本ではキング夫人と呼ばれた)である。ウィンブルドンで最多記録の20回優勝、さらに四大大会ではシングルス、ダブルス、混合ダブルス合わせて39回優勝しているが、彼女は、1973年に世界の耳目を集める「あっぱれ!」の試合をやってのける。相手は、ほとんど引退したとはいえ、男子の元世界王者ボビー・リッグス。なんでそういうことになったのか、という驚くべき顛末をこの映画はじっくりと見せてくれる。
1973年当時、社会における男女平等などまだまだちっとも進んでおらず、次の大会の女子の優勝賞金が男子の8分の1だと知ったビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、試合をボイコットし、友人のジャーナリストも巻き込んで、女子テニス協会を発足させる。そんな頃、ビリー・ジーンは一人の女性と運命的な出会いをする。美容師のマリリン(アンドレア・ライズブロー)だ。夫がありながらもマリリンと深い関係になってゆくビリー・ジーンのもとに一本の電話が入る。元男子世界チャンピオンで男性至上主義をふりかざすボビー・リッグス(スティーブ・カレル)からの試合の申し込みだった。ボビーの提案を却下するビリー・ジーンだったが、事態は思わぬ方向に…。
男女平等社会といわれる現代でも、それは建前だけだねと思うことはあるし、男たちの本音は違うなあと感じることは多いが、このボビーなる男の言動は(パフォーマンスの部分もあるが)なかなかえげつない。全米テニス協会の責任者ジャック・クレイマー(ビル・プルマン)と二人で、「女をコートに入れるのはいい。でなきゃ、球拾いがいない」とか「女は台所と寝室にだけ必要なものだ」というような意味の言葉を平然と放つわけだ。ビリー・ジーンの怒りは如何ほどだったろうか。相手が現役でもない55歳の男なら29歳女子のトッププレイヤーならちょろいと思うのは、つい女子の肩を持ちたくなるからだろうが、クライマックスのビリー・ジーンとの試合の前に、もう一戦あって、実は意外な結果に終わるのである…それは映画を観てのお楽しみ。
題名の『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』に、私は二重の意味を思った。男性至上主義との闘いと、女性が女性を好きになることがタブーである時代に生きるビリー・ジーン自身の葛藤。テニスにおいては強気のビリー・ジーンが、マリリンとの関係性においては、奔放なマリリンに比べ、ずっと受け身である。いけないことをしているのだという自責の念が、終始彼女について回るのだ。ボビーとの試合後、ロッカールームで一人号泣する彼女の姿には胸が打たれる。彼女は強くて、弱い。他の人がそうであるように。
ビリー・ジーン・キング御本人に細かな取材を行って作り上げた脚本と、『ラ・ラ・ランド』のイメージから遠く離れ、ビリー・ジーン・キングになりきって熱演したエマ・ストーン、お調子者で悪趣味のいけ好かない男の裏にひそんでいるものを手品のように見せたスティーブ・カレルに注目してほしい。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/
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