原題 | Lady Bird |
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制作年・国 | 2017年 アメリカ |
上映時間 | 1時間34分 |
監督 | 監督・脚本:グレダ・ガーウィク |
出演 | シアーシャ・ローナン(『つぐない』『ラブリー・ボーン』『ブルックリン』)、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、ルーカス・ヘッジス(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリー・ビルボード』)、ティモシー・シャラメ(『君の名前で僕を呼んで』)、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス |
公開日、上映劇場 | 2018年6月1日(金)~全国ロードショー |
受賞歴 | ゴールデングローブ賞2018 映画部門 主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)受賞(シアーシャ・ローナン) |
恥ずかしいほど愚かでイタくて、愛おしいあの頃
離れてみて初めて気付く親のありがたみと故郷の温もり
『フランシス・ハ』や『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』と、美人なのにセクシャルアピールよりマニッシュで飄々とした可愛さが魅力の女優のグレタ・ガーウィグ。彼女の初監督作となる本作は、出身地のカリフォルニア州サクラメントを舞台に、親との確執や、故郷を否定しながらも内心愛着を持っていたり、恋や友情や進路について悩んだりと、国も世代も違えど共感しまくりの青春映画である。
自分のことを“レディ・バード”と呼ばせる女子高生・クリスティンは、いつも味方になってくれる失業中の父親(トレイシー・レッツ)と看護師として家計を支える母親(ローリー・メトカーフ)、それに養子の兄とその彼女の5人暮らし。心配性で過干渉気味の母親とはいつもケンカばかり。兄が通った公立高校で暴力事件が起きたからと、クリスティンはカソリック系の私立高校へ通わされている。おデブの親友・ジュリーといつもつるんでは、理想の彼氏のことや進路について夢想したり悩んだりして、高校生最後の年を過ごしていた。
神父に薦められて受講した演劇コースでダニー(ルーカス・ヘッジス)と知り合い、誠実で優しい人柄に惹かれてたちまち恋に落ちる。彼の祖母は「いつかはこんな家に住みたい」とかねてから憧れていた家の持ち主で、クリスティンのことを大切に扱ってくれる、正に理想の彼氏だった。ところが、ダニーのある秘密を知り、あえなく“The End”に……。失意のクリスティンを慰めるジュリーをよそに、今度はクールでカッコいいカイル(ティモシー・シャラメ)に惹かれる。カイルに近付きたいばかりに、自分を偽り背伸びしてハイソなグループに入ったクリスティンだったが、ジュリーと疎遠になってしまう。
そんなクリスティンのことが心配でならない母親は、ことあるごとに文句を言ってしまう。娘と過ごせる最後の感謝祭やクリスマスを楽しみにしていたが、それも叶わず。一緒にドレスを買いに行ってはケチばかりつける。「少しは褒めてよ!」と言われ、「あなたに最高の女性になってほしいから言うのよ!」とどこまでもかみ合わない母娘。クリスティンが東部の大学に願書を出しているのも知らず、地元の大学への進学を希望する母親。こんなダサくて辛気臭いサクラメントから早く出て行きたい、うるさい親元から離れたい、もっと違う自分になりたい、と遠くのステージへ思いを馳せるクリスティンだった。
“レディ・バード”ことクリスティン演じているのは、子役で注目された『つぐない』以来、演技派美人女優として人気の高いシアーシャ・ローナン。本作では『ブルックリン』に次ぐ2度目のアカデミー賞主演女優賞ノミネート、ゴールデングローブ賞2018では 映画部門 主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞している。背伸びしては失敗したり、大切な家族や親友の存在をないがしろにしたり、理想とかけ離れていく自分に幻滅する等身大の高校生を、愛おしいほどキュートに演じている。それから、二人のボーイフレンドにもご注目。特に、『君の名前で僕を呼んで』で人気沸騰中のティモシー・シャラメが、今度はクールな高校生役でクリスティンの黒歴史の一つとなる。そんなツンデレ彼氏もよく似合う。
自分のために厳しくしてくれているのに、反発するだけで何も分かってなかったあの頃。「親心、子知らず」ではないが、離れてみて初めて気付く親心に、今さらながら悔悛の情に涙してしまう。さらに、あれほど嫌がっていた故郷を懐かしく思い、その温もりを恋しく感じてしまう。誰しも覚えのある巣立ちの頃の不安や葛藤や切なさを、“レディ・バード”は優しく思い出させてくれる。そして、自分の恥ずかしくなるような黒歴史であっても、愛おしく思えてくるから不思議だ。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://ladybird-movie.jp/
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