制作年・国 | 2018年 日本 |
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上映時間 | 1時間45分 |
監督 | 羽住英一郎 |
出演 | 東出昌大、新田真剣佑、森川葵、北村匠海、町田啓太、要潤、吉田鋼太郎他 |
公開日、上映劇場 | 2018年6月1日(金)~全国ロードショー |
~ドライバーもメカニックも全身全霊!
ラリーにかける男たちを描く本格派ヒューマンエンターテインメント~
ハリウッドでレーサーを描く映画といえば、F1の実話を元にした『ラッシュ/プライドと友情』(13)が記憶に新しいところだ。遡ること10年以上前には、日本の漫画が原作の香港映画『頭文字D THE MOVIE』(05)で、台湾の人気歌手、ジェイ・チョウが主人公に扮し、日本の公道をハチロクでツイスト走行する姿が印象的だった。そしてついに、日本人キャストによる本格的なモータースポーツムービーが登場したのだ。ラリー競技の最高峰とされるWRC(世界ラリー選手権)の登竜門である国内シリーズに挑む姿を描く本作。普通ならドライバー同士の頂点を目指す闘いが最大の焦点となるが、『OVER DRIVE』はライバルとの闘い以上にポイントを置いて描いている部分がある。それは、マシンを常に最高のパフォーマンスが出来るように保つメカニックの描写。ラリーシーンと同じぐらい丁寧に、メカニックの試行錯誤や見事なチームワークで制限時間内にダメージを受けた車体を蘇らせる工程が描かれる。『海猿』シリーズの羽住英一郎監督が、兄弟の葛藤の物語を絡ませながら、メイドインジャパンらしいモータースポーツムービーに仕立て上げた。
WRCの登竜門であるラリーシリーズに挑むスピカレーシングファクトリーには、現在国内トップ争いをしているドライバー直純(新田真剣佑)、直純の兄でチーフメカニック兼エンジニアの篤洋(東出昌大)が所属している。攻めすぎる走りを繰り返す直純と、その走りに意見をする篤洋とが整備のたびに衝突し、チームが険悪なムードに包まれることも度々だ。ある日直純のマネジメント担当に、スポーツエージェントの遠藤ひかる(森川葵)が任命される。ずっと育ててきた学生ゴルファーの担当を外され、ラリーのことを全く知らないひかるは動揺する。さらに、自分勝手な直純の態度に翻弄され、すっかり自信を失ってしまうのだったが・・・。
今年は主演作が目白押しの東出昌大が演じる指先まで油まみれで真っ黒なエンジニアの兄・篤洋。そして見事に鍛え上げた上半身を披露し、どこか破滅的で、寂しそうな表情を滲ませる天才ドライバーの弟・直純。過去にしこりを抱えたイケメン兄弟のぶつかり合いが展開される一方、北村匠海演じる直純のライバル、新海彰との優勝争いも見どころだ。海外ラウンドをはじめ、お台場や北陸、そしてクライマックスの北九州と各地の公道を駆け抜けるラリーの様子はまさに手に汗を握る迫力だ。地形や天候、そして季節によってコンディションが変わるコースで、見事なチームプレーを見せるメカニックとそれに応えるドライバー。両者の気持ちが一つになってこそ、限界を超える真の走りを手にできる。そんな一人一人の群像劇でもあるのだ。
メインキャストで紅一点となる森川葵が、メカニックやラリーの知識がない観客をナビゲートしてくれるかのような新人マネージャーを好演。彼女同様、思わぬ仕事に就かされ、最初は不満を抱えていた町田啓太演じる新米メカニックも、最後は仕事にプライドを持てるまでに成長する。コンマ1秒の世界で闘うために全員が力を合わせるラリーの世界をじっくり映し出した直球ど真ん中のヒューマンドラマ。スピード、ドライビングテクニック、そして自分が走ってるかのような迫力もぜひ、体感してほしい。
(江口由美)
© 2018「OVER DRIVE」製作委員会