原題 | Call Me by Your Name |
---|---|
制作年・国 | 2017年 イタリア、フランス、ブラジル、アメリカ |
上映時間 | 2時間12分 |
原作 | アンドレ・アシマン「Call Me By Your Name」 |
監督 | 監督:ルカ・グァダニーノ(『ミラノ、愛に生きる』) 脚色:ジェームズ・アイヴォリー(『モーリス』『眺めのいい部屋』『日の名残り』などを監督) 撮影:サヨムブー・ムックディプローム |
出演 | ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール |
公開日、上映劇場 | 2018年4月27日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー |
受賞歴 | 第90回(2018年)アカデミー賞脚色賞受賞(ジェームズ・アイヴォリー) |
「何ひとつ忘れない…」
一度しか手にできない心と体だからこそ、
この恋の痛みも喜びも忘れずに生きていく。
「この恋、何ひとつ忘れない」・・・永遠にオリヴァーに愛される喜び、もうそれだけで、一生、生きていけそうな気がした。すっかりエリオに感情移入してしまい、オリヴァーとの恋を疑似体験したようだ。17 歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)と24 歳のオリヴァー(アーミー・ハマー)とのひと夏の恋に、こんなにも心奪われるとは・・・時が経つにつれ、二人が過ごした日々の尊さが、せつなく胸に迫ってくる。
何十年経っても思い出されるのは、本当に愛した人のことばかり。エリオとオリヴァーの恋は、“一生に一度の恋”を思い起こさせる。恋い焦がれるトキメキや戸惑い、歓びと悲しみと切なさに身を焦がす想いを、繊細なエモーションで体現したティモシー・シャラメとアーミー・ハマー。さらに、知的な寛大さで二人の恋を見守ったエリオの父親役のマイケル・スタールバーグ。北イタリアの避暑地を舞台にした美し過ぎるラブストーリーは、男女の区別や年齢を問わず、鮮烈に記憶される傑作である。
1983 年の夏。17 歳のエリオは、北イタリアの避暑地にあるヴィラで、美術や音楽にスポーツ、さらに外国語にも触れさせようといろんな人との交際を勧めてくれる寛大な両親のもと、恵まれた日々を送っていた。ある日、大学教授の父がアメリカから招いた24 歳の大学院生オリヴァーがやって来る。背が高く、煌めくようなハンサムなオリヴァーは、スポーツもダンスも上手いジェントルマンで、たちまちみんなの人気者になる。そんなオリヴァーに最初は可愛い抵抗を示していたエリオだったが、一緒に過ごすうちに、オリヴァーがエリオの理想とする知性の持ち主であることや、彼の古代彫像のような完璧な優美さに惹かれていく。
前半、エリオが、ガールフレンドと付き合いながらもオリヴァーへの想いを募らせていき、お互いの気持ちを探り合うような駆け引きが展開される。微妙に変化する二人の表情を観察しながら、避暑地で一緒に過ごしているような気持ちで観てほしい。後半、お互いの気持ちを確かめ合う辺りから、一気に劇的な展開となって、心をわし掴みにされる。
特に、一夜を共にしてからのアーミー・ハマーの表情がいい! エリオに妙によそよそしくされ、彼を傷付けたのではないかと心配するオリヴァー。それまでより少し上から捉えたカメラに、アーミー・ハマーのブルーの瞳が憂いを湛えて、この上なく美しいのだ。「僕がどれだけ幸せか分かるかい?君に後悔してほしくないんだ」と訴えるオリヴァー。誠実さが滲むシーンだ。さらに、エリオの思わぬ反応に、一時の肉体的欲求ではなく、真剣に愛してくれていることを確信したオリヴァーの喜び。「君の名前で僕を呼んで」という意味が理解できるような、胸を熱くするシーンが続く。
そして、夏の終わりと共に別れを迎える二人。悲嘆にくれるエリオに父は、「善良な二人は友情以上の絆を得られたようだね。羨ましいよ。普通の親なら息子の熱が早く覚めるようにと願うだろうが、私はそんな親ではない。今はまだひたすら悲しくて苦しいだろう。その痛みを葬るな。感じた喜びも忘れずに」と励ます。マイケル・スタールバーグの口から静かに放たれる言葉の数々は、まだ同性愛に対する理解度が低かった時代にあって、なんと人間愛に満ちていることだろう。本作のテーマが込められた重要なシーンでもある。
原作は20年後の二人が回想する形式で描かれ、とてもメランコリーな雰囲気だそうだ。それを、ジェイムズ・アイヴォリーの脚色で、ルカ・グァダニーノ監督がより共感できる現在進行形に作り直したという。知性あふれる若き才能の持ち主、ティモシー・シャラメと、より深い人間性で存在感を増すアーミー・ハマーに魅せられる、“至福の時”がここにある。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://cmbyn-movie.jp/
(C)Frenesy, La Cinefacture