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『いぬやしき』

 
       

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作品データ
制作年・国 2018年 日本 
上映時間 2時間7分
原作 奥 浩哉「いぬやしき」(講談社「イブニング」所載)
監督 監督:佐藤信介  脚本:橋本裕志  音楽:やまだ 豊
出演 木梨憲武 佐藤健 本郷奏多 二階堂ふみ 三吉彩花 / 濱田マリ 斉藤由貴 伊勢谷友介
公開日、上映劇場 2018年4月20日(金)~全国東宝系にてロードショー

 

ジジィが正義のヒーローで何が悪い!?
家でも会社でもバカにされ余命宣告までされた絶体絶命ダメオヤジ、
冷酷イケメン高校生相手の涙ぐましい超能力決戦!

 

優れた映画は、時代や時の社会情勢を色濃く映し出すものだがSFやロボット系アクション(戦隊もの?)なのに“現代の社会現象”を適格に映し出していて驚かせたのが東宝『いぬやしき』だ。


累計発行部数2000万部を超えた『GANTZ』原作の奥浩哉と、それを実写映画化して大ヒットさせた佐藤信介監督が再びタッグを組んだ『いぬやしき』。新宿上空250メートルを音速で飛ぶ男たちの闘いを、ものすごい臨場感で再現する、これぞ“新感覚バーチャルムービー”というにふさわしい。「犬の映画」ではなかった。


inuyashiki-500-5.jpg若者向けだろう、と思っていたら主人公は冴えないことおびただしい初老のサラリーマン犬屋敷壱郎。16年ぶり映画主演の木梨憲武。会社では上司から黙殺され、やることなすことヘマばかりで今ではゴミ扱い。実際「次何かヘマしたらクビ」と予告もされている。本人は真面目に一生懸命やっているつもりなのにうまくいかない、こんな極めて要領悪い“ドジ”男もかつて時に目にしたもの。決して珍しくないだろう。


inuyashiki-500-3.jpgもう一人、いぬやしきと同じ力を持ち、対極の立場になるのが凶悪殺人者・獅子神晧(佐藤健)。このショボいジジイVS二枚目若手が全編を貫いて対決する。  獅子神はまた、高校では、悪ガキどもから激しいイジメを受けている友人安藤(本郷奏多)をただ一人助ける優しい若者。会社でのミソっかすと高校でのイジメられっ子を助ける高校生=社会的弱者の意外なコンビの反逆というコミックならではの“夢の構図”が映画「いぬやしき」だ。


inuyashiki-500-1.jpgショボいジジイは会社だけじゃない。家でも教育ママ(濱田マリ)、娘・麻理(三吉彩花)からも虐げられているという無残さ。そんな犬屋敷じいさんが医師から末期ガンで余命宣告を受けた晩、獅子神と二人でいる時に、墜落事故に巻き込まれたことから何と人間をはるかに超越する無類のパワーを手に入れる。社会と高校の弱者が突然、強者に早変わりしたら…。いかにもコミックらしい“大逆転”の夢があっさり実現してしまう。


ここでひとつ思い当たったのがアメリカの不思議なSF映画『コクーン』(2作=85、88年)。見た人ならご存知。これは宇宙から謎の物体が飛来してきて、そこにいた老人たちが若返り、病気も治って元気になる珍しい“老人回春映画”だった。ラストは老人たちが宇宙船に乗り、夢の星に移住するというまさしく夢の映画。


inuyashiki-500-2.jpg『いぬやしき』でも主人公のガンは完治し、あまつさえ肉体は機械で強化されて「弱者」ではなくなってしまう。その一方、獅子神は手に入れた力を思うがままに行使して、悪そのものの連続殺人鬼になって凶行を続ける。心優しかったはずの獅子神はいぬやしきとは逆に事故から人間が変わってしまったのだ。いぬやしきオヤジはそんな獅子神を止める存在になるべく決意を固める…。


inuyashiki-500-4.jpg肉体がガチガチと機械になるシーンなどおそらく“戦隊もの”の趣なのだろう。獅子神は指鉄砲で人を殺しまくる。スマホやパソコンを指で狙うだけで人がバタバタ死んでいくのだから、これほど楽な殺人はない。新宿の大型画面で獅子神が大画面から指鉄砲で殺しまくるシーンは、パソコン・スマホ時代の「安易な人殺し」を思わせてひたすら不気味だ。こちらのラストは、ゴミ扱いジジイと凶悪殺人鬼のがっぷり四つの対決で手に汗握る趣向。当方も“頑張れじいさん”と同世代応援に力がこもった。


(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://inuyashiki-movie.com/

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 ©奥浩哉/講談社(C)奥浩哉/講談社