原題 | The Only Living Boy in New York |
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制作年・国 | 2017年 アメリカ |
上映時間 | 1時間28分 |
監督 | マーク・ウェブ(『(500)日のサマー』『gifted/ギフテッド』) |
出演 | カラム・ターナー、ジェフ・ブリッジス、ケイト・ベッキンセール、ピアース・ブロスナン、シンシア・ニクソン、カーシー・クレモンズ他 |
公開日、上映劇場 | 2018年4月14日(土)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、ほか全国順次ロードショー |
ああ青春、されど青春!
いつでもどこでも、若者は悩んで彷徨う…自分の道を見つけるまで
インターネットでこの映画のオフィシャルサイトをのぞくと、本作の原題でもあるサイモン&ガーファンクルの名曲「The Only Living Boy in New York」が延々と流れていて、京都の下宿で過ごした青春時代が思い出され、ひどく懐かしい気持ちになった。楽しいこともあったが、つらいことも恥ずかしいこともいっぱいあって、「The Only Living Girl in Kyoto」だったんだと思ったりするのだが、そもそも青春なんて、カッコ悪いものなのだ。大人のふりしても幼稚さから抜け切れず、自分が何をやりたいか掴めなくてあっちフラフラこっちフラフラ、ちょっとのことで人生終わり状況に自分を追い込み、また、ちょっとのことで舞い上がったりする。この映画の主人公も、まあ似たり寄ったり。
ニューヨーク・マンハッタン。主人公の青年トーマス(カラム・ターナー)は、大学卒業後に、セレブたちが居住する高級住宅街のアッパー・ウェストサイドにある実家を出て、ダウンタウンの安アパートでひとり暮らしを始めた。それは、ちょっとした反抗だったのかもしれない。彼は、古書店で働くミミ(カーシー・クレモンズ)に恋しているが、彼女にはバンドマンの恋人がいて、ちっとも発展の兆しがなく、自分が何をやりたいかについても的を絞れず、宙ぶらりん。危険だったけど、刺激的だったマンハッタンが、今は、居心地は良いのだけれど、退屈になってしまったとトーマスは感じていて、そんな街の姿は、平凡な自分の日常に似ているとも思っていた。
そんな彼に声をかけてきたのが、同じアパートのW.F.ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)と名乗る中年男性だった。悩めるトーマスは、自分の胸の内を彼に語ることが多くなっていくが、ある日、青天の霹靂ともいえる現場に出くわす。トーマスの父親(ピアース・ブロスナン)が、若い女性とデートしていたのだ!これを境に、トーマスの日常に大きな変化が…。
何やら狂言回しのようなナレーションが挟み込まれるのだが、W.F.ジェラルドなる人物の正体が明かされ、ラストシーンの情景を見た時、「な~るほど~!」と膝を打ったのである。青春の、ある意味滑稽で、ある意味シリアスな部分を描きつつ、“ある秘密”が伴うペーソスも絡ませ、一人の青年をめぐるすったもんだにこっちも振り回される。物語は途中から意外な展開となり、しみじみとした結末に着地するまで、けっこう楽しませてもらった。
監督は、『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ。ニューヨークへの愛情がみっちり込められていて、背景となるスポットそれぞれにも趣がある。ニューヨークというのは、さまざまな分野で作家と呼ばれる人たちの創作欲に訴える力が強く、また、“映像的な”街なんだなあと改めて思った。ニューヨーク愛といえばウディ・アレン監督だが、そのスタンスを踏襲しているといってもいい。商業主義がはびこり、めまぐるしく移り変わるマンハッタンへの思い、似たような店に似たような街角ばかりになってほしくないという気持ちを本作にも感じたのだった。
そして、音楽好きには嬉しい多彩なナンバーが画面を盛り上げる。冒頭に述べたサイモン&ガーファンクルをはじめ、ニューヨークと言えばこの人、ルー・リード、さらにジャズの名匠たちの曲も流れ、つい身体を揺らしてしまう。サントラ盤が欲しくなるような洒落た選曲だ(今のところ予定なしと聞くが、サントラ盤、ぜひ出してください)。ともあれ、多様な楽しみに満ちた青春映画の秀作だと思う。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.longride.jp/olb-movie/
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