原題 | Grzeli nateli dgeebi |
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制作年・国 | 2013年 ジョージア・ドイツ・フランス合作 |
上映時間 | 1時間42分 |
監督 | 監督・脚本:ナナ・エクフティミシュヴォリ、共同監督:ジモン・グロス |
出演 | リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア、ズラブ・ゴガラゼ、ダタ・ザカレイシュヴィリ |
公開日、上映劇場 | 2018年3月24日(土)~テアトル梅田、5月19日(土)~京都シネマ、近日~元町映画館 他全国順次公 開 |
受賞歴 | 東京フィルメックス最優秀作品賞 2013年ベルリン国際映画祭国際アートシアター連盟賞/香港国際映画祭ヤング・シネマ部門グランプリ・国際批評家連盟賞/サラエボ映画祭グランプリ・最優秀主演女優賞/モントリオール・ヌーヴォー映画祭審査員特別賞/東京フィルメックス最優秀作品賞/米国アカデミー賞外国語映画賞ジョージア代表 他 |
14歳にして早くも訪れた人生の岐路。
苦境の時代を力強く生き抜く勇気と術を教えてくれる
旧ソ連邦から独立した国々の映画となると、俄然見たくなる。特に、カスピ海と黒海に挟まれたジョージア(旧グルジア)やアゼルバイジャン、アルメニアの映画は、独自の文化や言語を持ちながら隣接する大国ロシアやオスマントルコの影響を受けてきた歴史的背景があり、またソ連邦崩壊後の内戦や隣国との紛争などで大きな禍根を残しながらも、日々を懸命に生きる姿に惹かれるのだ。
本作は、1992年、ジョージア(旧グルジア)の首都トビリシが舞台。ソ連邦から独立直後の内戦勃発で生活は一変し深刻な物資不足に陥っていた。そんな不穏な状況下で暮らす二人の14歳の少女たちの成長を通して、ジョージアの人々にとって未だに拭い去れない苦難の記憶と、戦争の理不尽さや暴力連鎖へのアンチテーゼが力強く描かれている。同じくジョージア映画の『みかんの丘』(2013)や『とうもろこしの島』(2014)のような、人間の尊厳と反戦の意図が明確に伝わってくる感動作である。
エカ(リカ・バブルアニ)は、家の中で終日だらだらと過ごす姉と生活を支える母との3人暮し。父親は刑務所に入っているが、はっきりとした理由は知らされていない。深刻な食糧不足でパンを買うのもひと苦労。大勢の殺気立った大人たちの中で仲良しのナティア(マリアム・ボケリア)と交代で並んで買っていた。ナティアは、料理好きな祖母とアルコール依存症の父親とケンカばかりしている母親との4人暮らし。
美しいナティアには二人の少年が好意を寄せていた。一人は優しくてハンサムなラド、もう一人はいつも不良仲間とつるんでいるコテだ。エカもラドとナティアの恋の行方を静かに見守っていたが、ある日パンの行列に並んでいたナティアをコテとその仲間が無理やり連れ去ってしまう。助けてくれなかった周囲の大人たちに怒りをぶちまけるエカ。ところが、あれほどコテの求愛を拒んでいたナティアがあっさりと結婚式を挙げることになる。
未だに無くならないという誘拐結婚は、少女を誘拐して男女の既成事実を作った上で結婚を納得させるという、何とも強引な手法である。それにより少女の教育を受ける機会を奪い家庭に縛り付けるのである。エカは、そんな理不尽な男社会や抵抗もしない女性たちへの怒りを込めて、ナティアの披露宴で男の踊りであるシャラホを踊ってみせる。そして、エカは、期待外れの結婚に不平不満をもらすナティアを連れ出し、彼女の誕生日を祝ってあげることにするが……。
ジョージア出身のナナ・エクフティミシュヴォリ監督が自らの少女時代を重ねて描いたというから、半端ないリアルさで当時の緊迫した社会状況や人々のやるせなさが伝わってくる。最後に、意を決したようにエカが刑務所にいる父親をたった一人でたずねるシーンがある。必死で暴力を否定し続けてきたエカが、真実と向き合おうとする姿に大きな成長を感じさせ、見る者を勇気付ける。
主役のリカ・バブルアニとマリアム・ボケリアの、14歳にして大きな決断を迫られる状況や少女らしい揺れ動く心情を表現した瑞々しい演技もまた、爽やかな印象をもたらす。
(河田 真喜子)
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