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『ロング、ロングバケーション』

 
       

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作品データ
原題 The Leisure Seeker 
制作年・国 2017年 イタリア 
上映時間 1時間52分
原作 マイケル・ザドゥリアン
監督 監督・脚本:パオロ・ヴィルズィ(『人間の値打ち』『歓びのトスカーナ』)、撮影:ルカ・ビカッツィ(『グレート・ビューティ/追憶のローマ』『グランドフィナーレ』)
出演 ヘレン・ミレン(『クィーン』『ヒッチコック』『黄金のアデーレ 名画の帰還』)、ドナルド・サザーランド(『普通の人々』『マッシュ』『ハンガーゲーム』シリーズ)、ジャネル・モロニー、クリスチャン・マッケイ
公開日、上映劇場 2018年1月26日(金)~TOHOシネマズ 日本橋、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS、他全国ロードショー

 

ヘレン・ミレン×ドナルド・サザーランドという名優で贈る、
明るく楽しい“終活”ロードムービー♪

 

“終活”といっても、アメリカを舞台にすると、かくも明るく楽しい傑作ムービーとなるものなのか!?―― それもそのはず、本作はアカデミー賞®俳優のヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドという大ベテランと、イタリア映画界の最高のスタッフが結集して奏でる、人生讃歌の大フィナーレを鮮やかに魅せてくれるのだから。


longvaca-500-5.jpg監督は、深い人間ドラマ『人間の値打ち』や女たちの哀しみを陽光の下に描出した『歓びのトスカーナ』で脚光を浴びたイタリアのパオロ・ヴィルズィ監督。アメリカを舞台にした企画のオファーを何度も断り続け、ダメ元で「ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドが出演するなら」と無理な条件を出したところ、あっさりと快諾され、撮影せざるを得なくなったという。そこで監督は、イタリア映画界が誇る脚本家3人と共同でアメリカの小説を脚色し、撮影をあのパオロ・ソレンティーノ監督作品で有名な巨匠ルカ・ビガッツィに依頼。まさにドリーム・チームによる傑作の誕生となったのである。


longvaca-500-2.jpg結婚50年になるジョン(ドナルド・サザーランド)とエラ(ヘレン・ミレン)は、ある日突然、愛車のキャンピングカー「レジャー・シ-カー」で旅に出る。元文学教師のジョンに彼が敬愛するヘミングウェイの家を見せようと、フロリダのキーウェストを目指してボストンからルート1号線をひたすら南下。意気揚々と出発したはずの二人だったが、実は深刻な事情を抱えていた。エラは末期がんを患い、出発の日は再入院の予定だった。息子と娘の心配をよそに、認知症を患う夫・ジョンと共に最後のバケーションを楽しもうと暴挙に出たのだった。


longvaca-500-3.jpgかつては子供たちと一緒にエラの故郷があるアメリカ南部を目指して「レジャー・シ-カー」を走らせていた。家族との思い出がいっぱい詰まったルートを、今は“まだら認知症”のジョンと二人だけで行く。エラのナビゲートなしではジョンは前へは進めない。ジョンが失禁しても優しく着替えさせ、時々正気に戻ったかと思えばふっと別世界へ行ってしまうジョンに、「もう、うんざり!」と嘆きながらも、「ごめんよ」と落ち込むジョンを優しく慰めるエラ。


longvaca-500-4.jpg道中、ジョンに“置いてけぼり”にされたり、強盗に遭ったり、突然ジョンがエラの不倫を疑った相手の男「ダン」を訪ねてみたり、果てまたエラを不倫相手の女と間違えて別れ話をしてしまったりと、思わぬ夫婦の秘め事が露呈するという珍道中。ジョンの認知症に振り回されながらも、「あなたなしでは1分でも生きていけないわ」と深い愛情を示すエラ。かつては愛情深く教養のあるハンサムな夫に、社交的なブロンド美人だった妻。50年経っても愛し合う夫婦の最後のバケーションの行く先は……。


longvaca-500-1.jpg怒ったり、憎んだり、呆れたり、嘆いたり…それでも、笑って語り合える思い出を共有した夫婦だからこそ、その幸せな時間の尊さを知る。幸せとは、終わってみないと分からないものなのかも知れない。エラの下した決断に至極共感してしまうと同時に、そのアッパレさに爽快な気分になった。普段から憎まれ口しかきかない自分たち夫婦だったら?―― 自分が先に死んで、長寿家系の夫が今後何十年も不自由な環境で孤独に生きていくことを思うと、いたたまれなくなった。ジョンとエラのように仲のいい夫婦なら尚更のことだ。フロリダの陽光の下、煌めく夫婦愛がまぶしかった。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/longlongvacation

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