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『ローズの秘密の頁(ページ)』

 
       

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作品データ
原題 The Secret Scripture
制作年・国 2016年 アイルランド 
上映時間 1時間48分
原作 セバスチャン・バリー「The Secret Scripture」
監督 ジム・シェリダン(『父の祈りを』)
出演 ルーニー・マーラ『キャロル』、ヴァネッサ・レッドグレイヴ『ジュリエットからの手紙』、エリック・バナ『ミュンヘン』、ジャック・レイナー『シング・ストリート 未来へのうた』、テオ・ジェームズ『ダイバージェント』
公開日、上映劇場 2018年2月3日(土)~テアトル梅田、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー

 

愛を信じ、誇りと希望を失わず、生き抜いた女性の半生に迫る

 

40年の歳月の重みがずしりとのしかかってくる力作。カトリック教会が大きな社会的影響力を持っていたアイルランドで、苦節のときを耐え忍んできた女性ローズの半生を描く。


rose-500-1.jpg精神科医のグリーンは、アイルランド西部の精神科病院に、自分の赤ん坊を殺した罪で40年も収容されている精神障害犯罪者、ローズの再評価を引き受ける。聖書の余白に書き込まれた日記がきっかけで、グリーン医師はローズからその人生を聴き取ることになる。


rose-500-5.jpg第二次世界大戦時、ローズは、疎開した田舎でマイケルと出会い、恋に落ちる。マイケルは、義勇兵としてイギリス空軍のパイロットになっていたため、地元のアイルランド共和軍(IRA)からは反逆者として追われる身。二人は無理やり引き離され、ローズは精神病院に強制入院されてしまう…。


rose-500-3.jpg若いローズを演じるルーニー・マーラの自由奔放で、誇り高く、媚びることのない表情から目が離せない。マイケルへの一途な愛と、自分は我が子を殺しておらず、子どもがいつか迎えにきてくれると信じる思いが、精神病院での非人道的な仕打ちにも耐えさせる。婚外子を妊娠した女性に対する、カトリック教会による非人道的な扱いに驚く。


晩年のローズを演じるヴァネッサ・レッドグレイヴの毅然としたたたずまいがすばらしい。焦点の合わない、ぼんやりした目線が、時に、意志的な表情に変わり、内に秘めた強靭な精神力を感じさせる。映画は、グリーン医師がローズに出会ってからの数日間と、何十年にわたる回想シーンとをコンパクトに織り交ぜ、ドラマチックになりすぎることなく、淡々と描いていく。グリーン医師と一緒に、ローズの話を聞きとる看護婦の表情がいい。


rose-500-4.jpg病院の古い建物の室内シーンが多く、アイルランドの曇った空は、女性を抑圧した時代を象徴するようだ。ローズがマイケルへの愛を追い求めたように、ゴーント神父もまたローズを愛し、深い愛ゆえに苦悩した人として強い印象を残す。ローズが弾くベートーヴェンの“月光”の調べが哀しい物語に寄り添う。


rose-500-2.jpg時折、現実と、夢の中の幻想を混同するローズの姿が描かれるが、果たしてローズは本当に我が子を殺したのかというサスペンス的な要素が、最後、予期せぬ形で結末を迎え、現在と過去が重なり合うラストは、恋に落ちた頃のローズが輝かしいほどに美しく、生き生きしているだけに涙を抑えられない。希望を失うことなく、何十年も生き抜いてきた老女に、映画が用意してくれた恩寵のようにも思える。「愛を込めて見たものは真実、あとは妄想」と語るローズ。波打ち際のロングショットがいつまでも心に残る。


(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://rose.ayapro.ne.jp/

© 2016 Secret Films Limited

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