原題 | The Sense of an Ending |
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制作年・国 | 2015年 イギリス |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | リテーシュ・バトラ |
出演 | ジム・ブロードベント、シャーロット・ランプリング、ハリエット・ウォルター、ミシェル・ドッカリー、エミリー・モーティマー、ビリー・ハウル、ジョー・アルウィン、フレイア・メーバー他 |
公開日、上映劇場 | 2018年1月20日(土)~シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、2月10日(土)~シネ・リーブル梅田、2月17日(土)~京都シネマ、シネ・リーブル神戸、そのほか全国順次ロードショー |
~いぶし銀の名優が、サスペンスフルな物語の余韻を深くする~
年を重ね、若い頃の美貌が変化してくると、さっさと舞台から退場する俳優もいれば、年輪に磨きをかけて「さすがやなあ!」と思わせる境地に達する俳優もいる。シャーロット・ランプリングはまさに後者のひとり。この人が出ているとなると、私はどうしても観たいという気になり、そして裏切られることがない。世間的には“おばあちゃん”と呼ばれる年齢になっても、知的な色っぽさとミステリアスな雰囲気をまとっているのだもの。やっぱり素敵だ!
世界の文学賞でも突出した権威を誇るイギリスのブッカー賞に輝いたジュリアン・バーンズの小説『終わりの感覚』をもとに、『めぐり逢わせのお弁当』の監督リテーシュ・バトラが映像化した。40年前の青春時代の思い出が現在によみがえり、ある真実をあぶり出していく過程はスリリングともいえる。文学的なタッチが好きな人にはぜひともお薦めしたい。
ロンドン。弁護士の妻マーガレット(ハリエット・ウォルター)と離婚し、今は小さな中古カメラ店を営みつつ年金暮らしをしているトニー(ジム・ブロードベント)だが、ある日、法律事務所から思わぬ手紙を受け取る。40年も昔に恋人だったベロニカ(フレイア・メーバー)の母セーラ(エミリー・モーティマー)が亡くなり、トニーへの遺品があるという。その遺品とは、トニーの親友で自殺してしまったエイドリアン(ジョー・アルウィン)の日記だと知らされるが、遺言執行人のベロニカ(シャーロット・ランプリング)がその引き渡しを拒否しているのだそう。青春時代に思いを馳せながら、トニーはベロニカとの再会を果たすのだが…。
忘れかけていた思い出は記憶違いの思い出として姿を変え、老境にあるトニーを動揺させながら、彼に信じられない行動を起こさせる。トニーがストーカーのような執心を持つに至っては、つい笑ってしまいそうになるが、失われてしまった青春にしがみついている男の哀れさも影のように寄り添ってくる。一方、毅然としたベロニカの態度と、その背後にある積年の感情にも見る者は大きく心を揺さぶられていく。そして、手紙で始まり、手紙で終わるこの物語は、スキャンダラスな真実を超え、人生の達観とでも呼ぶべき境地にいざなっていくのだ。若手や中堅俳優もイイが、シャーロット・ランプリングとジム・ブロードベントのふたりが醸し出す、その場の空気に色をつけてしまうほどのオーラに包まれて、じっくり楽しんでみたい一作だ。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://longride.jp/veronica/
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