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『希望のかなた』

 
       

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作品データ
原題 原題:TOIVON TUOLLA PUOLEN 英語題:THE OTHER SIDE OF HOPE 
制作年・国 2017年 フィンランド 
上映時間 1時間38分
監督 監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演 シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、イルッカ・コイヴラ、ヤンネ・ヒューティアイネン、ヌップ・コイブ
公開日、上映劇場 2018年1月6日~シネ・リーブル梅田、1月20日~京都シネマ、1月27日~元町映画館 他全国順次公開

 

~人と人が、助け合い、支え合うことの尊さ~

 

映画の奇跡のようなラストショットにいつまでも忘れえぬ深い余韻が残る。内戦、難民、民族差別と混沌とした時代の中で、フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督は、困った人に手を差しのべるという、人間としてごく当たり前の、ささやかな行いをめぐる物語をとおして、希望というほのかな光をそっと送り届けてくれた。監督の前作『ル・アーヴルの靴みがき』(2011年)に続く“難民3部作”の2作目。


kibou-500-1.jpgフィンラントのヘルシンキに入港した船の石炭の山に隠れてやってきたのは、内線が激化するシリアから逃れてきた青年カーリド。彼はハンガリーの国境で離ればなれになってしまった妹の行方を捜していた。難民申請が却下され、トルコに送還されることになり、収容施設から逃走。レストランのゴミ置き場で寝ていたところを、店のオーナーのヴィクストロムに見つけられ、下働きとして雇ってもらう。言葉も通じないフィンランドで一人ぼっちのカーリドが、収容施設で友達を見つけ、ヴィクストロムやレストランの個性豊かな従業員たちに助けられ、妹との再会を果たそうとする。一方、差別主義をあらわにするネオナチ集団がカーリドにしつこくつきまとい、夜道を一人で歩くカーリドに恐怖が忍び寄る。


kibou-500-2.jpgアキ・カウリスマキ監督の描く作品では、登場人物は無表情でぶっきらぼう。でも、全身から漂う可笑しみがあり、目と目の会話や、仕草のやりとりで、思いは十分伝わる。説明を省き、省略の限りを尽くしたリズムのよい展開が心地よい。とりわけヴィクストロムがアルコール依存症の妻と別れ、営業の仕事を辞めて、さびれたレストランのオーナーになるまでのくだりは、ほとんど言葉もなく、淡々と描かれ、おもしろい。ヴィクストロムや店の従業員たちが、日本食が人気ということで、寿司に挑戦したり、拾った犬をカーリドがイスラム教に改心させたと語るエピソードなど、あちこちに笑いのツボがあり、楽しめる。


kibou-500-3.jpg難民を排除するのではなく、同じ人間同士、仲間として受け入れ、助け合うこと。そんな小さな、さりげない優しさの中に、人と人との間の目に見えない絆にこそ、希望の光があるはず…という監督のメッセージに、新年早々、心が洗われる傑作。


(伊藤 久美子)

 公式サイト⇒ http://kibou-film.com/
© SPUTNIK OY, 2017
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