原題 | Diamant noir |
---|---|
制作年・国 | 2016年 フランス・ベルギー |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | アルチュール・アラリ |
出演 | ニール・シュネデール、アウグスト・ディール、ハンス・ペーター・クロース、アブデル・アフェド・ベノトマン、ラファエル・ゴダン |
公開日、上映劇場 | 2018年1月6日~テアトル梅田、2月11日~神戸アートビレッジセンター、近日~公開京都シネマ ほか全国順次公開 |
復讐とダイヤモンドへの愛とに引き裂かれた青年の心の闇に迫る
久しぶりに見ごたえのあるフレンチ・ノワールの新作が登場。亡き父の復讐のため、伯父の宝石商一家に近づき、ダイヤモンドの強盗を企てる青年ピエール。しかし、ダイヤモンドの輝きに魅入られ、一家の信頼を得るにつれ、強盗計画を迷い始める…。
パリで仲間らとともに強盗を繰り返していたピエールのもとに、何十年も前に姿を消した父の訃報が届く。ベルギーのアントワープにあるダイヤモンド商家に生まれた父はダイヤモンドの研磨中の事故で指を失い、一家を追い出された上に財産も奪われ流浪の人生を送ったのだった。ピエールは父の復讐を果たそうと、父の葬儀で会った従兄のガブリエルを通じて、アントワープの伯父の商家やダイヤモンド工房にも出入りするようになる…。
ダイヤモンドの研磨で、生来の才能を発揮していくピエールは、しだいに、伯父の信頼を得ていく。伯父の息子のガブリエルが病気持ちで、商売においても父親と正反対の考え方の持ち主で、伯父がガブリエルを愛しながらも持て余しているさまや、ピエールに少しずつ心を許していくさまも丁寧に描かれ、人間ドラマとしても見ごたえがある。
ピエールが、強盗団の参謀ラシッドを、父親のように慕い、彼にだけは屈託のない笑顔を見せるのが印象的。ダイヤモンドの原石を研磨し、輝きを見出すことに喜びを感じるようになり、強盗することにためらいを感じ始めたピエールは、強盗計画を進めるラシッドと伯父らとの間で、板挟みになっていく。ピエールの揺れ動く心情を繊細に演じたニール・シュネデールは、フランス映画アカデミー・セザール賞新人男優賞を獲得。伯父を演じるのは、オタール・イオセリアーニ監督の作品にも出演しているハンス・ペーター・クロースで、おだやかな物腰に注目。
ピエールが、鋭い眼と記憶力を生かして、盗みに入る予定の邸宅の間取りや監視カメラの位置を偵察するシーンが冒頭に描かれ、何度もクローズアップされるピエールの目が、映画の象徴的イメージとして焼き付けられる。その目に映し出されるのが、ダイヤモンドの原石の輝きとなり、最後、彼の瞳に映るのはどんな風景だろうか。ピエールの部屋の窓を叩く樹の枝のエピソードも不気味で、もがれた腕のイメージも鮮烈に心に残る。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ https://www.diamantnoir-jp.com/
(C)LFP‐Les Films Pelleas / Savage Film / Frakas Productions / France 2 cinema / Jouror Productions