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『祈りの幕が下りる時』

 
       

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作品データ
制作年・国 2018年 日本 
上映時間 1時間59分
原作 東野圭吾(「加賀恭一郎」シリーズ「祈りの幕が下りる時」講談社文庫)
監督 福澤克雄
出演 阿部 寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈/キムラ緑子、烏丸せつこ、春風亭昇太、飯豊まりえ、上杉祥三、中島ひろ子、桜田ひより/及川光博、伊藤 蘭、小日向文世、山﨑 努
公開日、上映劇場 2018年1月27日(土)~TOHOシネマズ系など全国ロードショー

 

~刑事・加賀恭一郎を包む奥深い闇~

 

脂乗り切った人気ミステリー作家・東野圭吾の「加賀恭一郎」シリーズの『祈りの幕が下りる時』は意外や父子人情もの“泣かせる愛情物語”だ。主演は充実の阿部寛、松嶋菜々子。この“ぶっちゃけミステリー”ファンはどう見る?


inorinomaku-500-1.jpg東京都葛飾区小管のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は滋賀県在住の押谷道子。現場のアパート住人・越川睦夫も行方不明に。日本橋署・加賀恭一郎(阿部寛)らの捜査線上に浮かび上がったのは美ぼうの舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)だった…。  加賀は現場遺留品のカレンダーに日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見して激しく動揺する。かつて加賀を捨てて失踪した母親・田島百合子(伊藤蘭)に強くつながっていたのだ。事件の発端は、東北のバーで働き、ひっそりと死んでいった百合子。加賀は刑事になってからもその跡を追い続け日本橋署を動かずにいた。東野作品のエースの“秘められた過去”を見る一編。ミステリーでこんな“種明かし”編は珍しい。


inorinomaku-500-2.jpgミステリー史上、名探偵は少なくないが、有名な江戸川乱歩=明智小五郎、横溝正史=金田一耕介らは事件とは別の“高み”にいて、役目は謎解きだけ、が通常パターン。これは海外のコナン・ドイル=シャーロック・ホームズも同様だが、そこが“売れっ子東野”作品の人気の秘密か、名刑事の過去をさらして加害者を追及、断罪する。加賀は本来の捜査より、一歩も二歩も踏み込んで事件と絡んでいく。彼は母親の過去を探るうちに、より奥深い闇を見いだす。それは「自分の存在」とも深く繋がった過去でもあった…。


inorinomaku-500-3.jpgもう一人の主役・浅居博美(松嶋菜々子)もまた、不幸せな人生を歩み、父子で苦難の人生をたどっていたことが分かる。被害者も加害者も個人的に奥深い闇を抱えた過去が明るみに出て、犯罪に絡んでいく。こんなミステリーは見たことない。


事件は当然、複雑な展開になり捜査は難航。豪華キャストによる本格ミステリーは、配役によって多彩に裏付けられていた。加賀の従兄弟の若手・松宮刑事(溝端淳平)、病死した加賀の父親で元刑事の加賀隆正(山崎努)。隆正を看取った看護師・金森登紀子(田中麗奈)ら、ポイントはきっちり抑えている、といった印象だ。


inorinomaku-500-4.jpgここから先は“ネタバレ厳禁”だろうが「不幸せな生い立ち」が犯罪の動機になるという“基本線”は理解出来る。とりわけ、今作品で明かされる加賀の“不幸せな過去”には驚きだ。演劇ならちょっとした親子“世話もの狂言”の“愁嘆場”で泣かせる趣向が意外や意外だ。


加賀恭一郎を演じる阿部寛にも母親の行方や顛末が明かされる展開は「驚きだった」という。過去の“新参者”シリーズと比べ「今までは心の中を見せなかったから初めての試みだった」という。「加賀の違う一面を出したい」という福澤監督の意向で実現したそうだ。「心の中を見せない男の心中をあえて見せる」新たな試みだった。阿部自身「今回の演出の中で、どんどん“加賀を”壊していく作業があって、大きな刺激になりました」と話している。


inorinomaku-500-5.jpg日本橋署の加賀恭一郎はこれが最終章。改めてこのシリーズを振り返って阿部は「彼はとても優しい人、攻撃的な捜査は決してしないし、俯瞰的に見ていく。相手に嫌悪感を与えないで、いつの間にか事件を解決していく。その清々しさが加賀の一番の魅力だと思います」と総括している。優しさに包まれた東野圭吾ミステリーは納得出来る。


(安永 五郎)

 公式サイト⇒ http://inorinomaku-movie.jp/

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会